No.5
さっきの男の人の声が聞こえた瞬間、言葉を失ってしまった。
飛ん、でる……?
「ちっ…」
彩ちゃんは特に驚くわけじゃなく、小さく舌打ちをした。
「人違いちゃいますかね?炎のLv.6ってなんの事ですか?」
「しらばっくれるんじゃねえぞ。お前だけ記憶が残ってるっつぅのも上から報告が来てんだよ。」
記憶が残ってる…?
上から報告…?
状況がサッパリ分からんくて、首を傾げてたら、男の人が私を見て目を丸くした。
「…おいおい。」
「どうした?」
「あいつ、結界の能力者じゃねぇのか?」
……え?私?
「結界…って…」
「……渡辺さん!!走れ!!」
「えっ!?」
グイッ、と強く腕を引かれて走る。
後ろからはあの人達が追いかけてくる気配。
入ったのは、さっきと同じような路地裏。
一旦立ち止まった彩ちゃんが、首元のネックレスを握り締めた。
「あ…それ…」
「こっち。」
肩を抱かれて、密着する。
男の人の声が、近付いてくる。
とうとう、目の前に男の人達が来た。
「…っ…………あれ…?」
通り過ぎていった……?
ふぅー、と息をついた彩ちゃんが「あんな奴ら、1発でやれんねんけどな。」って呟いた。
「彩ちゃん。」
「あー、すまん。危ない目に遭わせて。」
「……さっきから、炎のLv.6とか、結界の能力者とか……なんなん?」
彩ちゃんの目を見つめると、一瞬唇を噛んだ彩ちゃんが私から顔を逸らした。
「…あかん。知らへん方が幸せってこともあんねん。これ以上危険な目に「もうとっくに目付けられたんちゃうん?私。」
「…。」
分かった。
そう呟いた彩ちゃんが、ふいに私を抱えた。
「えっ!?」
「じゃあ、自分の目で確かめてみ。あいつら、倒すから。」
あいつらって……
「!!」
上!?
空を見上げると、さっきの人達が私達の様子を伺ってて。
そのうちの1人が、すっと手のひらをこっちに向けた。
その時、直感的にヤバイって思った。
― ドンッ!!!! ―
物凄い爆発音がして、恐る恐る閉じていた目を開ける。
目の前には。
「っ!?」
「なんや、怖気づいたんか?」
飛んでる男の人達の目の前におるってことは。
「彩ちゃん、飛んでるん!?」
「まあな。」
しっかり掴まっとけ。
そう言った彩ちゃんに、大人しく従った。
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