No.4
「……で?」
「んー?」
「んー?ちゃうねん。何であんたついてきてんの?」
「私もそっち方面やからっ♪」
心底嫌そうな顔をする彩ちゃんについて行く。
あ、また眉間にシワ寄ってる。
「……彩ちゃんってさぁー」
「彩ちゃん言うな。」
「何で、人と関わろうとせぇへんの?」
無視かい。
そう言った彩ちゃんが、ふいに空を見上げた。
「…ちっ…」
「え?舌打ち?」
「うっさい喋るな。こっち来て。」
グイッと、腕を引かれる。
心なしか、焦ってるように見える彩ちゃんが、狭い路地裏に入り込む。
その瞬間、ドンッと彩ちゃんに壁ドンされた。
「っ!?え?え?」
「静かに。」
さっき私と喋ってた時とは、別人の目。
なんでか見覚えのあるその目に、懐かしさに似た胸騒ぎを覚えた。
その時。
「おい!どこ行きやがった!?炎の感知レーダー、ちゃんと作動してんだろうな!?」
「ああ。この辺で間違いないはずだ。」
野太い、男の人達の声。
彩ちゃんが息を潜めるように、更に密着してくる。
状況が分かってない私は、ドキドキするしかなくて。
ぎゅ、と彩ちゃんの服を掴むと、さっきの素っ気ない態度からは考えられん程優しく微笑んだ。
「大丈夫やからな、美優紀。私が守る。」
ズキン。
胸が、酷く痛む。
嬉しいはずやねん。
嬉しいはずやのに。
彩ちゃんが見てるのは、私じゃない気がして。
私じゃなくて、もっと別の私。
黙ってしまった私を見て、彩ちゃんが「しまった」って顔をする。
「……とにかく、私が守るから。」
そう言った彩ちゃんの目は、寂しそうやった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「分かったやろ。」
「え?」
「私とおると、危険な目にあう。」
目を丸くした美優紀が、すぐに真剣な顔をする。
「なぁ。」
「ん?」
「"美優紀"って、誰なん?」
立ち止まった美優紀が、目を細める。
私は1つため息をついた。
「……渡辺さんのことやん。渡辺美優紀やったよな?間違ってたなら、謝るわ。」
私、名前教えたことあったっけ?
その美優紀の言葉に、ピタッと動きが止まる。
振り返ると、真剣な顔をする美優紀がまっすぐ私を見つめてて。
口を開こうとした、その瞬間。
「やーっと見つけたぜ。炎のLv.6。」
最悪の状況が、出来上がってしまった。
続編へ
TOP 目次
投票 感想 メール登録