10.

山脇と入れ替わるように、松澤さんが部屋に入ってきた。
神妙な顔で俺に問う。
「何を話していたんですか?
まさか、本当はあと1週間しか命がない、なんて話じゃ……」
なんでそんなに鋭いんだよっ!!
意味わかんねぇ!
「…いや、違うけど。なんでそう思ったの?」
ポーカーフェイスを試みつつ、否定したら、松澤さんはほっと息をついた。
「いや…山脇先輩が微妙に悲しそうな表情だったので、もしかして…と思ったんですけど、私の考えすぎでしたか。すみません。」
あ、よかった。
違うって信じてくれた…
それにしても、意外と鋭いな、松澤さん。
今後、気を付けよう。

「どうですか、調子の方は??」
この空気を少し気まずく思ったのか、松澤さんは話題を変えてきた。
「んー?まあまあかな。
もう痛くもなんともないし…
部活行きたいな。」
「そうですか……
早く、部活来れるといいですね!」
励ますように、明るく松澤さんは言った。
「…そうだな…」
部活に行きたいのはやまやまだ。
けど…もう俺があそこに顔を出すことはないだろうしな…

「塾があるので帰りますね。
また明日も来ますんで。」
お大事に、そう言って、松澤さんは帰っていった。


いつもと変わりない会話。
前と全く変わらない調子で喋っているのに、
ついつい観察してしまう。

本当に、『演技』なのか
それとも、あれは『本心』なのか。

別に松澤さんに恋愛感情を抱いてたりする訳じゃない。断じて違う。
ただ。

俺に対してどう思っているのかが、気になるだけだ。
そう、それだけ。
14/06/20 22:46更新 / 美鈴*
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