9.
「あ、山脇。おっす」
「おっす。元気か?」
「ん、まあまあ。」
夕方に、山脇が来た。
…俺が、来てくれって頼んだ。
「で…話ってなんだよ」
今朝、あの後、
『今日部活終わったら病院に来てくれ。
話がある。』
そういう文章を山脇に送った。
山脇からの返信は、少し困惑した感じだったけれど、すんなりOKしてくれた。
…山脇だけには、真実を話そうと思う。
小学校の頃からずっと仲がよかった俺たち。
お互いへの信頼も厚い。
だからこそ。
「笑わずに、そして俺の話を絶対に信じてくれるって、約束できるか?
他人にも絶対に話さないって、約束できるか?」
「…あぁ。」
俺が言った瞬間、少しだけ山脇は顔をしかめた。
そりゃあ、この言い方だと俺が言おうとしてること、なんとなくわかるもんなぁ…
「俺は本当は、もうここにはいなかった。」
その出だしから始めて、
俺はここに来るまでのいきさつを全て話した。
事故にあい、気が付けば変な空間にいたこと。
シュニーという、不思議な人物に会ったこと。
そして。
俺の命が、残り一週間ほどしかないこと。
それら全てを、山脇は黙って聞いていた。
「……本当、なんだな?」
しばらくして山脇が口に出したのは、そんな言葉。
「本当だ…」
「…なぜ、俺だけに話したんだ?」
「だって…松澤さん以外でいくと、
一番俺が信用してるの、お前だったから。
松澤さんに話すと、また責任感とか色々感じて自分を苦しめそうだったからな…」
「そうか……」
「……わかったよ。
俺はお前の話を信じる。
また何かあったら言えよ。
じゃ、また。」
「おう。またな。」
俺は声をかけて、手をふった。
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