7.

2日目。確か、祝日だったと思う。

「……山脇じゃん。」
お昼過ぎ、ドアを開けて入ってきた意外な人物を見て、俺は一言声をかけた。

山脇は、俺と同じ吹奏楽部の男子で、同級生。
楽器はトロンボーン。
なんやかんやで、小学校の頃から俺達は仲がいい…と思いたい。
まぁ部活にいるときは、俺達二人はムードメーカーとして扱われてるっていうか……
場の和ませ役?っていうのかな?
まぁそんな感じ。
ちなみに、俺のいるホルンパートと山脇のいるトロンボーンパートは、何かと仲がいい。
俺達もそうだし、一年生も仲がよかったな。うん。
まぁ説明はこのくらいにして…


「なんだよ、俺が来ちゃまずかったのか?」
「いやそういう訳じゃないけど……」
少しむっとした山脇を宥めるように俺は言った。

というか、それよりもさ。
「部活は?まだ昼だろ?」
部活…午後まであるのに。
「お前…まさかサボって……!?」
あの(一応)真面目な山脇が、まさかのサボり……!?
「ちげーよ。先生に急な用事入ったから部活は午前で終わりになった。」
「そうか……
まぁ、あの部活中寝てるとても真面目な山脇くんが、サボるわけないもんな!!」
「殺すぞお前…」
笑ってからかってやれば、にっこり怖い台詞を言ってくる山脇。
そう、これがいつもの日常だった。

「で、部活どう?
というか、松澤さん預かってもらって悪いな。
ちゃんと真面目に練習してくれてた??」
パートリーダー兼生徒会長のアイツは、
生徒会活動でしばらく部活に来れないとのことで、
松澤さんを預かって貰うことにしていた。
まぁ松澤さんの事だし大丈夫だとは思うけどな。
「うん、まぁうちの一年とわいわい楽しそうにしてたっぽかったけどな。
ちゃんと練習してたと思うよ」
そう言って山脇は、スマホを取り出して、
「お前に見せようかと思って動画撮ってきた」
とかニヤニヤしながら言ってきた。
「お前、悪いヤツだな」
部活にケータイは持ち込み禁止だろう?
それに、ここ病院。
まぁここらへんは一応ケータイOKだけど…
見付かったらヤバかったんじゃないのか…?
スマホをいじる山脇に、
「そもそもなんで撮ったんだよ」
と訊ねたら、
「昨日俺が行ったとき、部活の様子を知りたがってただろ?だから。
あ、前半やったら暗いけれど気にするなよ。」
そういえば、松澤さんが昨日帰ったあとに、ちょっとだけ顔出しに来てたな。忘れてた。
確かにそんなことを頼んでた気もする。

「よし、これだ。
じゃ、流すぞー」
そう呑気な声で山脇は再生ボタンを押した。


写っているのは、トロンボーンパートが練習に使っている教室。
どうやら今は休憩中のようで、
楽器を持たず椅子に座って喋っている一年生が見えた。

『今日由紀ちゃんあまり元気ないね』
そう松澤さんに声をかけているのは、
えーと…名前が……あの…ちっちゃい子は………
そう!山本裕里さん!!
ってことは、その隣に座ってる背が高いのが…上田美佳さんで
松澤さんの向かいにいるのが、下田達哉君…かな?
まぁ多分そうだな。
つかさぁ。
「なんて画面の端にタオル映ってんの」
ほんの隅っこが、タオルっぽい布で覆われている。
「ああ。タオルかけて、寝てるふりして撮ったからな」
「お前やるな。つかそこまでする必要あったか?」
「そうでもしないとあっちも遠慮しちゃうしな。」
「ははは…」
もう乾いた笑いしか漏れないね、うん。

そうしている間にも、動画は進む。

『…そうかなぁ?いつもとどこが違うの?』
そう言っているのは松澤さん、少し困った表情をしている。
『そ
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