~ゆーくんのおうち~
「みーちゃん!あした、ぼくのおうちにおいでよ!」
「…ゆーくんの、おうち?」
ゆーくんと私が知り合って友達になってから、数ヵ月後のことだった。
いきなり、ゆーくんが家においで、家で一緒に遊ぼう、と私を誘った。
「ぼくのおうちね、おもちゃがたくさんあるよ!あとね、
みーちゃんにあげたいものがあるんだ!」
だから、おいでよ。
そう、いつものような暖かな笑顔で、私に話しかけるゆーくん。
「…おかあさんに、きいてみるね」
私はいつものように、少し気だるそうに答えた。
口調は少し暗かったがかといって別に性格が暗いとかそういうわけではなかった。インドアな訳でもなかった。
むしろ性格は比較的明るくかったし、公園に行けばお母さんとボールを蹴ったり、縄跳びをしたりして遊んでいた。
友達と会えば、もちろんたくさん遊んだ。おにごっこ。かくれんぼ。
一人じゃできない遊びを、ゆーくんは私にたくさん教えてくれた。
ゆーくんと仲良くなってから、そういうことが多くなったし、私の交友関係も少しずつ広がっていった。
いつしか私の大切な存在になっていたゆーくん。
その誘いは絶対に断りたくなくて。
「明日はいきなりすぎるでしょ?また今度ね?」
そう親に何度も言われても、ただひたすら。
「ゆーくんがあしたっていったから、あしたなの。
ほかのひじゃ、だめ」
そうしつこく言い続けた。
次の日、私のしつこさに折れてくれたお母さんに連れられて、あの頃の私にとっては少し遠い、ゆーくんの家を訪ねた。
ゆーくんの家は一軒家だった。それまで生まれてからずっとマンションに住んできた私にとって、一軒家に住むことほど羨ましいことはなかった。
「みーちゃん!いらっしゃい!!」
家の前でにっこりと出迎えてくれたゆーくんと一緒に家に入った。
やっぱり一軒家だから私の住んでいた家よりも広々としていて、思わず
「…いいなぁ」
そう口に出してしまっていた。
「……そういえば、わたしにあげたいものってなに?」
遊び始めて数時間後、ふとそのことを思い出した私がゆーくんに聞くと、
「あ、わすれてた!」
とゆーくんは何処かに走り去っていった。残された私は首をかしげるばかりだった。
数分して、ゆーくんは何かを手に持って戻ってきた。
「ごめんね、わすれてた。はいこれ」
そう言って渡されたのは、たまごっち。
「ぼく、これふたつもってるから、ひとつみーちゃんにあげる!これでいっしょにあそぼうよ!」
「……ありがとう!」
また少し、ゆーくんと仲良くなれた。
ゆーくんから貰ったたまごっちを首に下げて、私は微笑んだ。
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