23.
……松澤さんは、いつも、なんだか辛そうな顔をしている。毎日毎日。今だってそう。
…なんとかしてやりたい。…でも。
『貴方にも、分かったでしょう?何が、彼女のためにすべきことなのかを。
…さぁ、決断してください。』
…あぁ。痛いぐらいに、分かるよ。でもな。
「俺は、そんなの認めない。
きっと、それ以外の方法があるはずだ…。」
確かにその方法は最善かもしれない。…でも、それは同時に、最悪でもある。だから、俺はその方法を選ばない。
『……認めないんですか、それしか方法がないということを。』
「あぁ、認めない。」
『……じゃあ。』
突然、目の前から松澤さんが消え、いつの間にか俺はまた、シュニーの立つあの不思議な空間に立っていた。
『……模索してみてください。他に手があるかどうかを。
貴方に少し力を与えましょう。』
シュニーはそう言うと、少し微笑んだ…ように感じられた。
「…力?」
シュニーはゆっくりと頷いた。
『自分は無力だ、話を聞いて欲しがっているのはむしろあの少女の方なのではないか、そばで、話を聞いてやりたい、そう貴方は考えていたでしょう?』
「……まぁ、確かに、そうかもしれない…」
簡単に俺の考えを見通してしまうシュニーが、俺には少し恐く、それでいてどこか懐かしく感じられた。
『……ならば、』
ふわ、と俺の体は柔らかな光で包まれた。光に触れていると、少しずつ何かの力がみなぎってくる……気がした。もっとも、ただの錯覚かもしれないが。
『……貴方のしたいことをなさい。
そうすれば、いずれお分かりになるでしょうから………』
そして、俺の意識はそこで途絶えた。
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