20.
「…………ん………。」
…まだ…起きたくない…
眠い……もう少しだけ寝かせて………。
固い床の上で寝返りを打つ。
…ん?なんで俺寝返り打ってんの?
あ、そっか。
俺が死ぬとかそういうこと全て悪い夢だったのか。
だから今俺は生きてて、たまたま寝相悪くて布団から抜け出してこの固い床で寝てるんだ。そうそう。きっとそう。
そうだ。今日部活に行って松澤さんに会ったら、この夢の話をしてやろうか。
そうそう。今までのこの悲しいことは全部夢なんだ………
ゆっくり、目を開けた。
いつぞやの、宇宙空間のような、天体らしきものが浮かぶ世界。
ゆっくり見回せば、そこにはシュニーの姿。
はぁ……やっぱり。
「んなわけないよなー……」
いくらそうだと信じこもうとしても駄目だ。
やっぱりあの事は夢じゃなかった。
『…目が、覚めましたか??』
シュニーは少しずつこちらに歩いてきた。
『……いい夢は、見られましたか…?』
「…いや………。」
むしろ悪い夢だったと思う。
自分が死んでしまうのも嫌だったけれど、それよりも。
松澤さんに、辛い思いをさせてしまったことが、何よりも辛かった。
『……そうですか。』
俺は立ち上がってシュニーを見た。
『……彼女の時は……あの瞬間、止まりました。
彼女は心を閉ざし、何も見えなくなりました。』
シュニーは少しうつ向いてそう言った。
「……どういうこと?」
抽象的過ぎるけどなんとなくどういうことか分かった。
それなのに、そんな質問が口から出たのはなぜだろう?
『……彼女が、心配ですか?』
シュニーは俺の質問には答えず、そう俺に問い掛ける。
もしシュニーの言っていることが本当なら。
俺は、こくりと頷いた。
『ならば……実際に御覧ください。
さすれば、もう他には方法がないということも、お分かり頂けるでしょうから……』
冷たくて、けれどどこか暖かい蒼白い光が俺を包んだ。
「…裕里ちゃんは、何も分かってないよ。」
……気が付くと、俺の目の前で松澤さんがひどい顔をしていた。
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