5.
ふと目を覚ました俺は、
治療室で横たわっていた。
包帯であちこち巻かれていて、すこし苦しい…
それに、体が痛い……
周りの話を聞く限り、
俺はどうやら先程まで危篤の状態だったらしく、
俺の意識が戻ったことは奇跡に等しいらしい。
『期限は長くて10日間』
その言葉が思い出された。
やっぱりあれは…あの夢は、本当だったのか…?
何やらぺたぺたとよくわからないものが体に付けられて、
一通りの検査を終える。
看護婦らしき人が外に出ていって声をかけたと思えば、
松澤さんが中に入ってきた。
おいおい、ここ集中治療室だぞ!?
人入れて…いいのか…?
松澤さんは俺を見て、
少し驚いて、それからとても悲しそうな顔をした。
「ごめんな、松澤さん…
色々、迷惑かけて……」
俺にはそれしか言えなかった。
松澤さんの瞳から零れ落ちるものを見た俺は、
本当は「泣くな」って言って
そっと近くにいてあげたかった…
抱き締めてあげたかった…
けれど、看護婦はさっさと俺を移動式のベッドに乗せて、
病室へ運んでいった。
ふと松澤さんの方を見ると、
少し寂しそうに微笑む姿が見えた。
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