「お話」14.
「……とある朝のこと。
その日は、土曜日で、部活があった。
私は、いつものように、ジャージ姿で自転車を漕ぐ。
そして、あの場所へ足を運ぶ。
……事故から、三ヶ月。
初秋のあの頃とは違って、今はもう冬。
地面にはうっすら雪がつもり、空は蒼く透き通っていた。
私は、摘んできた小さな花を、そっと地面に置く。
そう。ここは、三ヶ月前の、事故現場。
過去にあんなことがあった事を匂わせないような、平穏な空気。
通りすがりの人にちらちら見られる中、私は一人、そこに立ち尽くしていた。
きら……
一瞬。
ほんの、一瞬だけ。
目の前を、光る何かが通った……?
きら……
きら、ひらり。
周りを見回してみる。
すると、私のすぐ近くに…
黄金色に輝く蝶が、金色の粉を少しずつふりまきながら飛んでいた。
『……きれい……』
思わず見とれてしまった。
と、蝶は私の隣に止まった。
蝶は、私をじっと見つめたあと、ひらひら飛んで行った。
…まるで、『ついてこい』とでも言っているかのように……
私は、ただ何も考えず。
気が付けば、金色の蝶を追いかけていた。」
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