18.

結局計画は全部松澤さんに任せてしまった。
まだ無理してはいけない、と言い張る松澤さんは、
「お菓子持ってきましたんで、どこか公園にでも行って食べませんか?」
そう提案した。
俺としても、ハードなことをすると本当に倒れちゃいそうだった。
だから、
「じゃあ、それで。」
そう答えた。

着替えるために、松澤さんを部屋から追い出した。
そして、ふぅ、と息を吐いてベッドに座り込む。
ダメだ…疲れる……
なんとか、何時間か持ってくれないかな、この体力…
万が一倒れちゃったりしたら、松澤さんに迷惑をかけてしまう。
それだけは避けないと。


近くの公園のベンチに二人で座る。
目の前にあったテーブルの上に、松澤さんはタッパーをたくさん並べていく…
何これ。量多すぎだろ。
「だって、何持っていっても次の日には綺麗に無くなっちゃってるんで、
少しずつ量を増やした結果です。」
心の声を出してしまっていたのか、少し恥ずかしそうに松澤さんは言った。

確かに、毎回来る度に何か置いていってたけど、
俺半分も、というかほとんど食ってねーよ…
山脇…遠慮もなしにばくばく食いやがって…

テーブルに置かれたものを見てみると、
チョコレートブラウニー、シフォンケーキ、スイートポテト、クッキー、チーズケーキ…そしてスナック菓子が二袋。
…昼飯二人分ぐらいの量あるぞこれ。
松澤さんってそんなにばくばく食うイメージないし、全部二人で食べきれる気がしねぇ………。

まぁとりあえず、「じゃあ、いただきます」と一言、ブラウニーを一切れ手に取り、口に運ぶ。そんな俺を松澤さんは穴が空きそうなほどじっと見つめている。

…見た目に反してあまり甘くない。
それでいてちゃんとココアの香りがする。
「旨い。」
一言呟くと、松澤さんは顔を輝かせた。
「そうですか!?よかった…

頑張って作った甲斐がありました!」

へっ!?これ全部作ったの!?しかも一日で!?
すげぇなおい。
どんだけ菓子作り好きなんだ…

その後も少しずつ、菓子を口にする。
どれも、そう甘くなく、とても旨かった。

色々と喋りながら、旨いケーキに舌鼓を打つ。
ふと、松澤さんの口が止まった。
「……どうかした??」
その顔が、なんだかとても悲しそうで、思わず声をかけた。
「え?あ、いえ何でも………」
松澤さんはしまった、という顔をしてから、何でもないように振る舞っている。けれど…
それでも隠しきれていない、どこか憂いを帯びたその表情。
俺は松澤さんの頭に手を伸ばすと、そっと撫でた。
「無理なんかするなよ。心配なこととか、悩みとか。迷惑なんて思わずに言ってな。
………いつでも、聞いてやるから。」
その言葉を聞いた松澤さんは、少し微笑んだ。
「いえ、今は大丈夫です。」


甘いものは別腹とも言うけど、それは本当らしい。
沢山あった菓子はほとんどなくなってしまった。
なんとなく、袋のスナック菓子には手をつけたくなくて、それだけ空かずじまい。
それ以外、全て食べ終わってしまった。

することもないのでぶらぶらと歩きながら病院に帰る。
松澤さんはこの後用事があるみたいで、病室まで俺に着いてきてからさっさと帰っていった。

松澤さんがいなくなると、俺はベッドに倒れこむ。
ものすごく疲れてる。
松澤さんといたときは全然しんどくもなんともなかったのに。
なんでだろうな。帰った途端に疲れが出てくるなんてな……
どうしよう。起き上がれねぇ………
体が…重いぃーーー……

「おい齋藤。今日外出てて大丈夫だったのか?」
頭上から聞こえる山脇の声。
ノックもなし
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