「お話」10.
「……それから、2週間がたった。
……私は、孤独になった。
私は最近、周りの声を無視するようになった。
……いや、『聞こえてない』って方が正しいかな。
先輩がいなくなって急に色を無くした私の世界には、もう誰もいない。
何も、映らない。
何も、面白味のないこのセカイ。
誰かに話しかけられれば、大抵無視する……というか、気付かない。
強く訴えられれば、機械的に答えを返す。勝手に口が動いて声が出る。…私には、自分が何を話してるのかなんて、わからない。理解できない。
授業になれば、勝手に手が動いてノートをとってる。
気がつけば、手をあげて発表してる。
……そして、気がつけば、生徒会で、会長に立候補していて、しかも当選していた。
……どれもこれも、私にとってはどうでもいいことなんだけど。
…そうだよ。
そうなんだ。
先輩が…齋藤先輩がいないと。
……私にとって、このセカイは、面白くもなんともないんだ。
……部活の日には、ほとんどずっと、一緒にいてくれた存在。
どんな時でも、私に話しかけてきてくれた存在。
どんな時でも……私を笑わせてくれた存在。
私が落ち込んでるときも、悲しんでるときも、苦しんでるときも、変わらず側にいてくれた存在。
先輩だって悲しいはずなのに、先輩だって辛いはずなのに。
私を、慰めようと。元気付けようと。
そうしてくれた、存在。
……先輩…………。
やっぱり、私にはその『存在』がないと……やっていけない。生きていけない。……幸せになれない。
……笑うことなんて。
……そんなの、できない。
モノクロどころか…真っ暗になってしまった世界。
そこに、光が差すことは…ないのかもしれない。」
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