人狼パロ(7/2早朝のログ、二回戦より)gr

我らが外交官、オスマンが殺された。
そのニュースは、普段取り乱さない俺たちの心を十分に掻き乱していった。

『小会議室にて会議を行う。幹部は全員出席されたし』

なぜって?それは。

俺達の仲間の中に、その犯人である「人狼」が紛れているからだ。


一足早く会議室に到着した俺は、自分の分の珈琲を淹れていた。角砂糖の入った瓶を手に取ると、
『グルッペン、俺にも砂糖回してほしいめうー』
なんて、昨日も確かに聞いたあの声が頭の中で響いた。
…オスマン。いつも彼が座っている席には、もう彼が座ることは無いのだ。そう思うと、何かが込み上げてくる感じがした。
駄目だ、まだ泣いては。今から会議をするんや。オスマンの仇を…仲間の中から探して、見つけて、殺すんや。
ふぅー、と、今日何度したかわからない溜め息をついてから、甘い甘い珈琲を一気に飲み干してしまう。
あぁ、そういえば、溜め息を吐くと幸せが逃げると言ったのも、オスマンだったか。
…オスマン。
会議室の外から、声が聞こえる。あいつらが来た。
もう俺はグルッペンじゃない。「総統」として、彼らを…正しく、導かねば。
俺は両頬をばちん、と叩くと、よし、と気合いを入れた。


それにしても。会議室は異様な空気に包まれていた。…無理もない。身内が、幹部が殺されるなんてこと、今まで無かったからな。それに、犯人が我々幹部の中に潜んでいるともなれば、尚更だ。
オスマン。俺はこいつらと違って、お前の死体を見ていない。俺だってまだ、受け入れたくない。昔馴染みの仲であるお前の死など、受け入れたくもない。俺は、現実から目を逸らしていたい…オスマン。
せめて、これが終わったら、埋葬してやるよ。皆で。オスマン。だから少しだけ…待っててくれ。

ざわつく会議室。一向に静まる気配がない。埒があかない。俺は、深く深く息を吸って、吐いた。
今は、感情など捨てろ。俺は何だ。俺は総統だ。皆が混乱している今、総統である俺がしっかりしていなくて、どうするんだ。なぁ、グルッペンよ。
「静粛に。」
お前が今一番しなきゃいけないことは。
「話し合いを始めよう。」
いくら残酷でも。いくら冷酷でも。心が無いと罵られようとも。更なる被害を防ぐために。
皆を真実へ導く。それが俺の、今すべきことだろう。そうだろう?グルッペンよ。

「こんな状況で、黙って、られへんよ…」
俺の声により静かになった室内で、ゾムの呟きが響いた。
…ゾム。我々の中では恐らく一番多く、死体を見てきた人物。彼ですら、もはや…何時ものを正気とするなら、まともではない。
「気持ちは分かるが、ゾム。少し落ちつ」
「でも!」
俺の声は、ゾムの悲痛な叫びによって遮られた。
「こんなん…俺、耐えられへんよ…だって……」
うって変わって、痛々しい声で弱音を吐くゾム。初めて見た、そんな顔。
「俺かて…信じられへん、」
トントンもゾムに同意するような素振りを見せる。まぁ…これが正常だ。大先生も、こんな会議なんてしたくない、とトントンをちらちらと見ている。…傷を抉るようで、悪いとは思うのだが。
「…犯人を炙り出す。それが、気付けなかった俺たちの、オスマンへのせめてもの償いだと、思わないか。」
俺は会議を続ける。
「だから…今だけでいい。耐えてくれ。」
すまない、という言葉は飲み込んだ。
俺は、我々の為に、俺は会議を続けさせる。
もう、犠牲者は出したくない。

かたかた震えながら泣いているゾム。
顔を青ざめさせて唇を噛んでいるトントン。
怯えながらおろおろとしている大先生。

この中に一人、犯人が、狼がいる。

信じた
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