そしてふたりで〜群青・山吹〜

彩野side

…ったく…

「なんでおいていかれたのー!?」
「まあまあ落ち着こう?」
拓実が私を制止しようとする。

何よ。
こいつが来なければ、二人きりになることなんてなかったのに!!

「僕がここに来なかったら、なんて考えてるだろ?」
へっ?
「どうしてわかったの!?」
そう驚いて訊くと、拓実は私を見下げる形で少しニヤッとして。
「そんな顔してた。」
そう言った。


「つかさぁ、拓実も誰か先輩と行動してたんじゃないの??
なんで一人なの?」
そう。
ゲーム開始直前、私には近くにいた山吹の人たちの言うことが聞こえていた。
『男女1、2年生のペアで行動する』
その言葉が。

だから、拓実も女子の先輩と行動を共にしていたはずだったんだけれど…?

「…奥村、お前これ見た?」
「え?」

拓実は、私に通信機の画面を見せた。

【死亡情報
上森鈴佳(山吹)
………】

え?
これってもしかして。

「お前らのいたところには聞こえなかったか…
ゲームを開始した場所、あれ学校っぽかったけどさ。
あそこの中庭をお前らが行った方と反対の方に突っ切って、階段を降りたらグラウンドがあったんだけど…

このゲーム、危険だな。
いくらバーチャルリアリティとはいえ…
地雷が埋まってるなんてな…」
拓実は無表情でしゃべっている。
「ま、踏んじゃった訳ですよ。僕が。
爆発するまで一瞬間があったんだけど、その時先輩が気付いたらしくて。
『後はがんばれ』だってさ。
僕は突き飛ばされてなんとか助かったけど、先輩がリタイアしちまってさ。他の人たちがどこにいるかわかんなかったし、
当てもなくうろうろしてたら、お前らに会った、ってわけ。」
「なるほど…災難だったね…」

この仮想現実の世界は、そういうことが普通にあり得るらしい。
毎年生存者が少ないのも納得できる。

「僕…守られるのは、嫌だ。
目の前で、僕のせいで消えて行くなんて…嫌だ。」
そう、ぼそりと呟いた拓実の顔を覗いてみたけれどあまりよく見えなかった。

「じゃあ、さ。」
「何?」

「守られるのが嫌なら、
私を守ってよ。」
「はぁ?」

はぁ…
どうせこういう反応だろうと思った。

「だって、これからしばらく二人で行動するんだし?」
「ちょっと待て。なんで二人で行動することになってる?」

はぁ…
わかってほしいんだけどな。

「一人じゃ危険だし、二人いた方が安全でしょ?」
もっともらしい意見を述べてみるけど。
「安全って…僕ら、敵同士だろ?
もし僕が、そのブレスレットをお前から奪って地面に叩きつけたら、お前アウトだぞ?」
そう…
私と拓実はチームが違うから、一応「敵同士」って設定になってる。
だけど…

「ねぇー一緒に行こうよ!だめ?」

そう言って拓実の腕をつかんで引っ張ってみる。
これで無理だって言われたとしても諦めるものですかっ

拓実は深ーいため息をつくと、
「どうせダメって言っても聞かないだろ?」
そう諦めたように言った。

「…ってことは……!!」

嬉しくって思わず笑顔になる。

「仕方ないし、一緒に行ってやるよ」


その頃。

「この人たち、一発殴ってきていいですかね?」
「止めとけ。どうせどこにいるかわからんしな。時間の無駄。」

彩野と拓実とのやり取りを通信機越しに聞いていた由希はそりゃもうものすごくいらいらしていたそうです。

「ったく。
あいつら、周りに人がいないからって盛大にいちゃいちゃしやがってーっ!」
「…なぁ、小原さんってやっぱり「違いますからね?私は拓実をそういう風に思ってる訳でも
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