14.
確かに、そんなことをした気もする。
そう。
俺はわがままだった。
覚えておいて欲しいとか言っといて
結局全ての人に俺の記憶を消して
けれど松澤さんにだけは思い出させて…
…謝りたい。
松澤さんに、謝りたい。
俺が、齋藤光希であることを、
松澤さんに知らせたい。
けれど、できない…
俺は、猫だ。
もう、人間じゃない。
人間と自由に話したりとかもできない。
意思疎通なんて、できっこないんだ…
それに。
俺が、齋藤光希であることを、伝えられるにしても伝えない方がいいと思うんだ。
だって。
わざわざ教えたりしなくても
松澤さんの心の中で、
齋藤光希という昔の俺は今でも生きているのだから。
教えずにいよう。
そして、また、日常に戻ろう。
松澤さんの俺への最後の願いは、もう叶っているのだから。
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