14.

確かに、そんなことをした気もする。

そう。
俺はわがままだった。

覚えておいて欲しいとか言っといて
結局全ての人に俺の記憶を消して
けれど松澤さんにだけは思い出させて…

…謝りたい。
松澤さんに、謝りたい。


俺が、齋藤光希であることを、
松澤さんに知らせたい。

けれど、できない…


俺は、猫だ。
もう、人間じゃない。

人間と自由に話したりとかもできない。
意思疎通なんて、できっこないんだ…

それに。

俺が、齋藤光希であることを、伝えられるにしても伝えない方がいいと思うんだ。

だって。
わざわざ教えたりしなくても
松澤さんの心の中で、
齋藤光希という昔の俺は今でも生きているのだから。


教えずにいよう。

そして、また、日常に戻ろう。

松澤さんの俺への最後の願いは、もう叶っているのだから。
14/06/30 22:05更新 / 美鈴*

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