「お話」28.
「ホルンを吹いていると、ふと思い出してしまう。
隣にいた先輩の吹く姿とか
時折こっちを向いて微笑んでくれたこととか…
先輩がいつもウォームアップで吹いていたメロディーを吹いてみる。
先輩とは違う、少し棘のある音色が部屋に響いた。
先輩から譲り受けてしまった先輩のホルンは、吹く気になれない。
だって、そんなことしたら周りがなんて言うかわかったものじゃないし…
周りに心配されないよう演技していたつもりだったけれど、
やっぱりみんな鋭いなぁ……
結局、無理矢理帰らされちゃった…
あの手紙を、ごっそり全て鞄に入れると、私のロッカーはずいぶんとスッキリした。
あんなに散らかっていたのが嘘のように……
全ての手紙の内容は…伝えることができない。
だって、手紙そのものが数えきれない程たくさんあるから…
だから、
これから話す文章は、
先輩からの、最後の手紙。」
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