ねこのみるゆめ。1
あーねみぃ……
ぼーっとした頭で時計を眺める。
もう8時かぁ……
……8時?
『うわーーーー!』
寝坊だ寝坊!!
やばいやばい!!!!
遅刻したら先生怖いんだよっ!
時計のお陰で完璧に目が覚めた。
ある意味時計に感謝しつつ、急いで朝飯を食べる。
寝癖とか別にどうでもいいんだけど、直さずに家を出ようとしたら母さんに叱られた。
『光希!あんたその髪型で学校行くつもり!?友達に笑われるよ!?
ちょっとぐらい直しなさい!』
けど別に友達に笑われたっていいし。
いつものことだし。
俺は黒い帽子を手に取って、
『母さん!帽子被ってくから直さなくていいしな!』
そう大声で言ってから、家を出た。
あーあ。
朝からいいことないな……
自転車を出しながら、ふと考えた。
……この調子でいくと……
今日、何かとんでもないことが……
『……あるわけない…よな。』
家族の自転車で邪魔されて自分の自転車がなかなか取り出せない。
あぁもうめんどくさいなぁ……
こうなったら…強行突破!
思いきり自転車を引っ張ると、他の自転車は少し傾いたし、一つは倒れたけれど、俺の自転車はなんとか取り出せた。
ごめんな、妹。
お前の自転車、倒しました。
心の中で妹に謝りつつ、
道路を走る。
さて、急がねば。
少しスピードを出しつつ、横断歩道を渡ろうとした、その時だった。
右からの、強い衝撃。
俺はあっという間に道に放り出された。
走る激痛と、遠ざかりそうな意識の中、俺は走り去っていく紅い車を目にした。
…体が、動かない。
周りが、次第に紅く染まっていく。
血で濡れたアスファルトが朝日でてらてらと光り、
俺の壊れた自転車は、いまだにタイヤがくるくると回り続けている。
……誰も、気付かないのかよ。
誰も、何もしてくれないのかよ。
俺の意識よ。
遠ざかるなら、遠ざかっていってほしい。
失うなら早くしろよ。
体が痛くて痛くて、堪らない……。
中学生が一人通った。
俺と同じ中学校の制服を着た男子が。
黄色い名札…一年生か?
その生徒は、俺をちらっと見ただけで、何の関心も抱かずに、何もせずに、通りすぎていった。
……なんだよ。
最近の若いやつは、無関心すぎる。
何も考えなさすぎる。
こんな状態になった俺を見て、なんとも思わないなんて……。
痛みの割に冴えている頭で、そんなことを考えた。
血が目に入ったかもしれない。
視界が紅く霞んでいく。
これで俺も終わりか……
人生、短かったな……
こんなことなら、あいつに素直に言っておけばよかった。
ごめんなさいって。
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