連載小説
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犯人捕カク大作戦(1)
「いい?下校時間をちゃんと守って、絶対にひとりで帰らないこと。

わかった? 今プリント配りますからね、おうちの人にもちゃんと見せるのよ。

ではこれで朝のHRを終わります。1時間目の授業の用意をして待っててください。」

「ふうちゃん、いっしょに帰りたいけど、今日あたし塾なんだよね」

「あっ、いいよ、あたし今日・・・」

「よし ふうか!オレ、おまえのボディガードしてやるよ」

「ダメダメ!ふうかを守るのは水沢くんに決まってんじゃん」

(…)突然あたしの顔が発火した。

「ちょっとぉ!水沢くんはケガしてんのよ!」

「あーもう、みんなまってよ、今日からあたし、ウチから迎えにきてもらうの」

「おかあさんに?」

「うん、車だから安全だろうって」

「そっかー、よかったじゃん」

「でもいつまで?」

「しばらく・・・」

「しかしまたいつ、おそってくるか、わかんないしな、もうこないかもしれないし、1年後にまたってこともあるかも」

「お迎えやめらんないよね、大変・・・」

「それだったら一番てっとりばやい方法があるさ、捕まえちゃえばいいんだよ、犯人を」

「誰が?」

「オレたちがさ」

「そんな簡単にいくわけないじゃん!それこそ大変だよ」

「でも解決法はそれっきゃないよ」

「第一ホントに犯人があらわれるかどうか、わかんないし」

「いいか、発案者はオレだから絶対やりたいけど、でもひとりってのはオレもちょっと心細い、ってことで誰かオレといっしょに犯人をやっつけたいヤツいないか?」

「エー、でもねー」

「・・・」

「チョットおもしろそうだネ」

「ウン、なんかこう、ワクワクする!」

「よーしオレ、その話ノッタ!」

「マジ?」

「オレも!」

「ボクも」

「あたしも!」

「ワシも」

「拙者も」

「おいどんも」

あたしはこのやりとりを、あっけにとられて聞いていた。

(オイオイ…みんな楽しんでるけど、いったいそんなことできるのか…)

「たぶんこれは長期戦かもしれないから、とりあえず放課後つぶれてもいいヤツにする」

みんな部活とか塾とか、ほかにもいろいろな事情や、その場のフンイキにノッちゃった子をのぞいて、結局残ったのは5人の勇気あるヒマ人(?)たち? 

「ちょうどいいや、今日からオレたち、われらがふうかと雲見中のみんなと、街の平和を守る正義の味方、…エーと…グレートレンジャー!」

「オオ」

「キャーカッコワルー!」

「ヤメテヨ!」

「オンナがひとり多い」

「とにかくみんながんばろうぜ!」

「オオー!!」

そのとき、先生が入ってきた。

「キャハハ!」

「ヒューヒュー」

「がんばってネ!グレートレンジャー」

「応援してるからね!」

「?! コラコラ!静かに!授業始めるゾ」

私はうれしかった。

クラスのみんながこんなこと考えてくれるなんて、これならホントにあのニクいヤツをやっつけられるかも、そして、イッパツ、ブンなぐってやりたい…

「ふうちゃん、お昼食べたら作戦会議するから屋上にきて」

「うん」

えみちゃんはレンジャーのメンバーのひとりだ。

あたしはなんだかウキウキしてくる。

ホントはまたねらわれるかもしれない張本人なのに。

「ふうちゃんゴメンネ、ホントはあたしも参加したかったんだけど」

「んーそんなこと、ぜんぜんなんとも思ってないよ。それよりあたし今なんか楽しくて」

…屋上は風がとっても気持ちよかった。

「おまたせー」

「あっきたきた」

「こっちこっち」

あれ!? あそこにいるのは…

「涼くん、なんで?」

彼はケガ人がからって、今回はパスだったのに。

「とりあえずオレ、犯人のカオ知ってるから、特別参加ってとこかな」

「では諸君、さっそく今回の使命につ…」

「そんなのどうでもいいから、はやく考えようよ!」

「クスッ」

「ゴホン、じゃなんかいい方法がないか考えよう」

「石を投げつける、砂をぶっかける」

「吉田くん化学部なんだから実験室からなにか毒薬みたいなの盗んできてよ」

「エェーそれはちょっと…」

「オイ、相手をコロすなよ、ギャクにこっちが捕まっちまう」

「そりゃトーゼンでしょ」

「とにかくあたしたちはぜったい安全じゃないとね」

「うーん、どうしよー」

「あんまり大きいのとか重いものは持ち歩けないよ、犯人が確実に来るって決まってるわけじゃないし」

「なんかちっちゃいものをポケットにしのばせておくの、たとえばガビョウとか」

「うん、それいいかも」

「そんで相手がひるんだところを水鉄砲かなんかで攻撃!」

「まるでガキの遊びだね」

「ヤツは凶器を持ってる、油断できねェ」

「バットは?」

「うん、骨折くらいさせてもこの際いいよね」

「そうよ、こっちだってケガしてんだし、相手は悪人よ」

「じゃそのほか、各自、武器になりそうなものを考えて用意する」

「エー、なんかあるかな」

「けっこう見つかるかもよ」

「それで武器は持ったとして、どうやってやる?」

「やっぱ、ふうかのあとを尾行して、そいつがあらわれたら、イッキに襲う、かな」

「でもオレたちがいること、犯人にわかっちゃうんじゃ」

「うーん」

その時はじめて涼くんが、「あのさ、こっちからいくと横断歩道の前に公園があるじゃない、オレ、意外にそこ、あやしいと思う。

もう暗くなってくるから誰もいないし、そいつがそこで待ち伏せしてるかもしれない…」

「ヘェー するどいネ」

「ひとつの可能性さ、そーじゃないかもしれないしネ」

「よしッ、いいか、作戦はこうだ、ふうかの尾行に2人、公園の入り口が見えるところに2人、公園の塀の外に2人、それぞれ待機、それならどっちにしろ何とかなるだろ、見つけたらイッキに攻撃! でどうだ?」

「いいんじゃん」

「そんなもんかな」

「うん、もうそれでいいよ」

「きっとうまくいくよ」

「OK!実行は明日から、では解散!」

「ヤベ、もう授業始まってるよ!」

「ヤダ!マズイヨ」

あたしたちは午後のはじまりのチャイムを知らずにいたらしい。

先生に注意されたのは仕方ないか。 
20/01/06 10:56更新 / 風香
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