連載小説
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「お話」21.
「気付けば、私は例の少人数教室にいた。

『え……?』

なぜ、私はここにいるんだろう??
私は…?私は…………

先輩を守るために、死んだんじゃなかったっけ???

そこら辺にあるものに手を伸ばす。
もし私が幽霊で死んでいるとすれば、きっとさわれないはず。

伸ばした手は、宙を切ることはなく、ちゃんと物に触れることができた。

『私……生きてる……?なんで……。』

『私が、時を戻した。』

聞き覚えのある声。

はっと、後ろを振り返れば。

宙をひらひらと舞う、蝶が一匹。
私を見つめてくる。

『私が…時を戻した。』
フィレモンはもう一度、何かに言い聞かせるように言った。

『なんで!?
貴方は私が命を捨てれば齋藤先輩を助けられるっていうから…!』

『あぁ。確かに言った。』

そう言ったフィレモンの声は、どこか辛そうだった。


『じゃあ…なんで………?』

『…耐えられなかった。』
『はぁ……?』

『あんなものは、もう見たくない』

蝶は、ぽつり、ぽつりと何があったのか話してくれた。


私が死んだこと。
齋藤先輩と同じように、消えていったこと。
齋藤先輩は自分のせいだと悔やみ続けたこと。

そして。

私と同じことを、してしまったことを。

時は輪を閉じて、
終わりがない、ただ同じことを繰り返す世界に成り果てた。

繰り返される過ちに
繰り返される結末

そして一人が立ち上がり
また同じことを繰り返す。

何度も何度も。
果てしなく、繰り返す。

そんな世界を見てきたと蝶は言った。

『いや…もうすでに、輪は閉じてしまっているのかもな』
そう、蝶は呟いた。

『どちらか一方が、輪を立ち切らないと、抜け出せない。
永遠に、このまま同じ瞬間を待つだけだ』

輪を…切ってくれ。

そう、蝶は静かに言った。

輪を…切る……

『…どう、すればいいの?』
蝶にそう問うと、
『輪を切ることか…?
それなら、簡単なことだ。

もう、こんなことはやめろ。
事実を、運命を受け入れろ…。』

『え……』

わかりきっていたことだった。

もう、こんなことはやめないと…
なんてずっと考え続けて
けれどただ諦めたくなくて。


齋藤先輩と過ごした日々は楽しすぎた。
そして、私の気持ちは重すぎた。

私の初恋を、こんな形で終わらせたくなくて。

ただ、私は。

前と同じように、二人で笑っていたかった、それだけなのに。

『…迷って…いるのか?』
私の心を見透かしたように、蝶はそう言った。

『…そう。私は迷ってる。
わかってるよ、そんなこと。』
私は呟いた。

『長い間、追い続けてきた願い、望み……
それを、今更諦めろって、言われても……』

『何が、言いたい?』

『…もっと、早く言ってほしかったよ。』
そう。もっと早く言ってくれれば。
『そしたら…
そしたらこんなに、迷わなかったのに……』

『お前は…っ』
蝶の声はいつもと違って少し憂いを帯びていた。
『お前はっ…過去に囚われすぎだ!!
もっと…未来に希望を持つとか、そんなことはできないのか!?

なぜ、そんなに過去に執着する?
過去というのはもう変えようがない!
あのときこうすれば、ああすれば、なんて今嘆いても仕方がないんだよ!』

そう、必死に説得しようとするフィレモン。
『それに…

齋藤は…今のお前を見て、どう思うだろうな?』

『え……』
話の展開が読めなかった。

『齋藤は、お前が過去のことばかり気にして…齋藤のことばかり気にして。

過去に囚われるお前を見て…
齋藤は、喜ぶと思うか……?』

齋藤…先輩…

過去に、囚われすぎ…

『そっ……

なんであんたにそんなことわかるの!?
なんで赤の他人にそんなことわかるの!?
そもそもなんで私のことばかり気にかけるのさ!?
別に私の側にずっといる必要ないでしょ!?
私を救う必要もないでしょ!?

もぅ、ほっといてよ……』」
14/06/30 22:07更新 / 美鈴*
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