読切小説
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ロンロンとサンタさん
ジリリリ・・・ ジリリリ・・・

(はい、もしもーし)

(もしもし、もしもーし!)

ジリリリ・・・ ジリリリ・・・

(ありャ 電話取ってんのに、なんでまだ鳴ってんだ?)

ジリリリ・・・ ジリリリ・・・

「はっ!!」 カチャ。

「なんだ、目覚ましか。ということは電話と思ったのは夢か。ハァ・・・ って、

うあぁ!11時40分?!」

「大変じゃ、オーイ! ロンロン! ロンロ〜ン!」

「ハイハイ、やっと起きましたか」

「やっとじゃない、なんで起こさん!」

「もうさんざん起こしましたよ!」

「ムゥー 遅刻だ、間に合わんかもしれん・・・

クゥー こうしてはいられん、ロンロン、はよ準備せィ!」

「もうまったく・・・ さぁさぁ、もう出してありますから、はやく箱に入れましょ!」

「ウム、それにしても頭が痛い・・・」

「ゆうべあんなに飲みすぎるからですよ、まったく。

よりによって、こんな時に飲むことないでしょう?」

「そんなこと言ったって、誘われれば無下に断れんじゃろ」

「限度ってもんがあるでしょう?」

「ああ もういい、はよ、やろ」

実はこの人、これでもサンタなんです。

そして、えっと、私はこの人のパートナー、トナカイのロンロンです。

今日はクリスマス・イブ。

1年で一番忙しい日です。

なのに二日酔いなんて、まったく情けない・・・

ところで私達は天の国に住んでいます。

よくいう神と呼ばれる存在です。

毎年クリスマスになると、神様のうちの何人かがサンタになって、

世界中の子供達にプレゼントを配るのです。

この人もそのひとりなんですけど、どうも、らしくなくて、

なんでこんな人と組まなきゃいけないんだろうと・・・

これから子供達に配るプレゼントを用意するんですけど、

もちろん、ひとりひとり違うものなので、

リストを見ながら、間違えないようにしなければなりません。

これがかなり時間をとられます。

「おい、これはどれだっけ?」

「エッ、 ・・・あ、ハイ、それはこっち」

「ウーム、これはなんて読むんだ?」

「エッ、そんなのも読めないんですか?」

「ムッ、ちょっと忘れただけじゃろが・・・

ロンロン、これは? ああ めんどくさい」

「あなたの仕事でしょうが。大体こんなことはもっと事前に・・・」

「ああ もういい、あんまりグダグダ言うな。頭にひびく」

「・・・ムカツクなぁー さぁ、とっととやりましょう!」

途中、眠ろうとするバルン(この人の名前です。)様を、

あらゆる攻撃で阻止し、すべて終ったのが午後6時5分。

「5分も遅刻ですよ!はやく乗って!」

「わかったから、そうあわてるな」

「さぁ、急ぎましょう!」

ソリは満天の星の中を走り抜けていきます。

「バルン様、少しスピード上げますよ」

ロンロンは自慢の足を使って、いっきに下界をめざそうとしました。

「うゎ! ロンロン、おまえ少々荒っぽすぎるゾ。

もっとゆっくり・・・ う、うゎ! プレゼントが落ちる、・・・わぁ〜 わしも落ちるゥ〜〜」

「えっ、わぁー バルンさまぁー!」

バルン様といくつかのプレゼントのフクロが、暗い闇にすいこまれていきました。

「ありゃー まいったなぁ・・・ バルンさまぁー!」

ロンロンもバルン様が消えた方へ向かって、まっしぐらに降りていきました。

ひゅー ドテッ!

「あいたたた・・・ ロンロンめー、いったいわしを何だと思っとる!」

「バルンさまぁー 大丈夫ですかぁー!」

「大丈夫なもんか ロンロン、だから言ったろう!

もっとゆっくり走らぬから、こういうことになるんだ」

「だって夜明けまでに終らなかったらって思ったらつい・・・」

「もうええ、そんなことより大事なプレゼント、落としてしまったじゃないか。 ・・・って」

気がつくと自分達のまわりを、数人の子供達が遠巻きにして見ています。

「なんだ、おまえたち、なにを見ている」

「・・・おじさんたち、なにしてんの?」

「わしはサンタクロースじゃ。

おまえたち、知らないはずはなかろう?」

「うそばっか。サンタなんて、ほんとはいないに決まってんだろ」

「なにを言っとる、げんにここにおろうが」

「そんなカッコしちゃって、おじさんはただの、どっかのおじさんでしょ」

「バカモン!空から来る人間などおらんだろうが!」

「またまたァー、どうせ、そのへんの家の屋根からでも飛び降りたんでしょ」

「なにアホなことぬかしおる、このガキどもが」

「サンタさん、いけません、そんな口の悪い!」

「ギャッ! トナカイがしゃべったぁ!」

「ワッ! 怪獣だぁ!」

「失礼な! こんなカワイイ僕を怪獣だなんて」

「どうせロボットかなにかさ。あの毛のしたにテープとか、しこんであるのさ」

ひとりの子供がロンロンのおなかのあたりを、バッと、つかみました。

「わっ、や、やめてください! ワハハ! くすぐったぁーい!」

「ホラ、こわくないだろ、べつに凶暴じゃなさそうだし」

ほかの子がそぉっと、ロンロンにさわろうとしました。

「僕はなんにもしませんよ。しないけど、あんまりさわらないで、くすぐったいです。」

「へぇ、ホンモノみたい」

「だからホンモノですってば!」

「おまえたち、いいかげんにせんか!

わしらはおまえたちの相手してやるほど、ヒマじゃないんじゃぞ!」

「ねぇ、おじさんたち、どっかのお笑いの人とか」

「ムゥー まだ信じぬのか。まったく夢のないガキどもだ」

「おじさんたちって・・・ たちはないでしょう? 僕はまだ若いんですからね!」

「そうだ、こうなったらオマエら、これからワシらの仕事を手伝え。

そうすればすべてわかるはずじゃ。

ロンロン、落としたものはどのへんだろうな」

「この懐中電灯でわかるはずです。」

「うむ、では空から探すとするか。みなもはよ乗るのじゃ」

「えっ、空って、ほんとにこのソリ、空を飛ぶの?」

「あたりまえじゃ! ほれ、はやくせぃ!」

子供達を乗せたソリは空高く浮かび上がりました。

「ひゃー ウソォー!」

「信じらんないー!」

「きっと夢さ」

「こわいー!」

「しっかりつかまるのじゃ!」

サンタさんは大事なものがあると、

ひときわ明るく照らしてくれる、魔法の懐中電灯で、

落としたプレゼントをどんどん見つけていきました。

あっちにひとつ、こっちにひとつ・・・

「サンタさん、どうやらこれで全部みたいですよ」

「そうか、やれやれじゃな」

子供達は、この信じられない出来事に、

みな、ボーっとしていました。

「こら、なにをボーっとしておる、

これからこれを、決められたところに届けるのじゃ。

急がんと間に合わんからの。おまえたちも協力せいよ!」

さてそれから、ホントに大忙しでした。

なにしろ世界中のすべての子供達ひとりひとりに、

プレゼントを配らなければいけません。

もちろん、この子供達も一生懸命、お手伝いをしました。

その目まぐるしさといったら・・・

でも子供達の目はみんなイキイキと輝いていました。

世の中にこんなに楽しいことがあったなんて。

いつしか空が白み始める頃、

すべてがうまくすすんで、無事終ったとき、

子供達はまるで、自分が自分じゃないほど疲れきっていました。

そして、夜通し起きていたこともあって、

いつのまにか、みんな死んだように眠ってしまいました。

サンタさんも地上でひと休みです。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「ロンロンはまだかのう・・・」

連絡をとろうと、ケータイを取り出したとき、

ソバで眠っていたはずの女の子が、じっとこっちを見ています。

「なんじゃ、もう起きたのか?」

「サンタさんがケータイ持ってる」

「なんじゃ、それがどーした、

サンタだってケータイ使うさ。べつにオカシクもないじゃろ」

「オカシイ・・・」

「フン」

サンタさんはプイッと、横を向きました。

「すいませーん、遅くなりましたー」

「ほんに遅いぞよ」

「すいません、でもやっと見つけました!」

じつは、今夜こんなに働いてくれた、

子供達のプレゼントがないことに気づいたのです。

そんなはずはないと、ありとあらゆるところを隈なく探すと、

けっきょくそれは、先ほど落ちたプレゼントのひとつで、

深い草むらの中にあって、

最後まで見落としていたのです。

子供達のほうを見ると、みんなまだよく眠っています。

さっきの女の子もいつのまにか、また眠っています。

「このままそっとしときましょう」

「うむ、よく働いてくれたからのォ・・・」

サンタさんとロンロンは、子供達ひとりひとりの名前のついた、

プレゼントを置いて、天の国へと帰っていきました。

「あの子達はサンタを信じてくれたかのォ・・・」

「ええ、これからはきっと信じてくれますよ」

「ロンロンも今回はいろいろとゴクロウだったのォ。

おまえがいてくれて助かったゾ」

「バルン様・・・」

バルン様がこんなこというなんて・・・

ちょっぴり感動していると、

「さぁ、打ち上げじゃあ! 今夜もパァーっといこうかのォ、ひょっひょっ」

「・・・飲みすぎはいけませんよ! きのう飲んだばかりでしょーが」

「うるさいぞ、ブツブツ。大体おまえはいつも文句ばっかいいおって。ウットウシイ」

「なんですか、あなたこそ神様のくせに、まるでアル中じゃないですか」

「なんじゃと!このおせっかいトナカイが」

「おせっかいですって! どういうことですか、大体あなたが・・・」

 

このコンビ、けっこう合ってるかも? ウフフ・・・
19/12/11 07:52更新 / coco

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