あなただけ:1(※♂化)
校庭に見える、人の輪。
その中心におる女の子に、視線がいく。
彼女は、渡辺美優紀。
この高校のアイドルみたいな子で、いつもニコニコ笑ってる。
皆のみるきー。
そして、俺の好きな人。
俺みたいな、目立つわけでもない地味な男が好きになる相手じゃないのは分かってる。
でもある日、放課後に教室に1人だけ残って寂しそうに空を見る彼女を見てから、心は奪われたままで。
名残惜しくも、ふいと彼女に背を向けた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
―ドサドサッ―
今日全部の授業が終わって、さぁ帰ろうと教室を出た時。
目の前に、落としてしまったのであろうクラス人数分のノートをせかせか集める渡辺さん。
俺も、慌ててノートを拾った。
「だ、大丈夫、か?」
かっこ悪いほどに緊張してしまって。
なんたって話したのはこれが初めてやったから。
バッと顔を上げた渡辺さんが、ほんの一瞬目を見開いた。
「……あっ…ありがとう!」
パァっと花が咲いたように笑う渡辺さん。
ドキンと胸が高鳴って、慌てて視線を逸らす。
全部拾い終わって、スッと立ち上がる。
「じ、じゃあ。」
「あ…う、ん…。」
何故か残念そうな顔をする渡辺さん。
その表情に、全身の筋肉が硬直したように動けなくなる。
もしかして、荷物を持って欲しいのか。
その判断が正しかったかは分からんけど、俺は渡辺さんからノートの束を奪い取った。
「えっ」
「や、重そうやったから…迷惑、やったかな」
「うっ、ううん!!ありがとぉ」
ほんのりと頬をピンクに染めてふにゃりと笑う渡辺さんから、急いで目をそらした。
「ほんまにありがとうなぁ。重かったから助かっちゃった。」
「いや、全然大丈夫やから。」
じゃあこれで。
そう言って立ち去ろうとした時、くいっとシャツの裾を引っ張られた。
「え…」
「あ…」
はっとした表情で、慌てて手を離す渡辺さん。
その気まずそうな顔にドキドキしながら、なんて言ったらいいのか分からずに頭をかいた。
しばしの沈黙。
その時、渡辺さんの友達であろう女の子2人が駆け寄ってきた。
「みるきー!」
「こんなとこおったん!?」
慌てて笑顔を浮かべる渡辺さん。
その笑顔は、どこか寂しげで、悲しそうで。
でもそんなこと聞ける勇気もないまま立ち尽くした。
楽しそうに喋ってた女の子が、俺を見て不思議そうな顔をした。
「あれ?誰?みるきーの知り合い?」
首をかしげた女の子に、もう1人の女の子が大きく笑った。
「そんなわけないやん!みるきーの友達にこんな地味そうな男子おらんって!」
酷いことを言われてるのは分かってる。
でも、それは紛れもない事実で、傷つくことは一切無かった。
でも、なんか気まずくて、苦笑いして立ち去ろうとした時。
「なんでそんな事言うん?」
驚いた。
やって、あの渡辺さんが低い声で怒ってたから。
女の子2人も、驚いてて。
俺は呆然とするしかなかった。
「山本くんは、ノート運ぶの手伝ってくれてん。そんなこと、一生言わんとって。」
怒った顔の、渡辺さん。
今まで、1度だって笑顔以外を見せんかったのに。
そして、女の子の1人が「みるきー…?」って呟いた瞬間。
「っ!!」
ハッとした顔で、渡辺さんがニコッと笑った。
なんとか場を和ませて足早に去っていく渡辺さん達を、俺は見つめるしかできんくて。
そして、ふと疑問に思った。
なんで、俺の名前知ってるんやろう。
その中心におる女の子に、視線がいく。
彼女は、渡辺美優紀。
この高校のアイドルみたいな子で、いつもニコニコ笑ってる。
皆のみるきー。
そして、俺の好きな人。
俺みたいな、目立つわけでもない地味な男が好きになる相手じゃないのは分かってる。
でもある日、放課後に教室に1人だけ残って寂しそうに空を見る彼女を見てから、心は奪われたままで。
名残惜しくも、ふいと彼女に背を向けた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
―ドサドサッ―
今日全部の授業が終わって、さぁ帰ろうと教室を出た時。
目の前に、落としてしまったのであろうクラス人数分のノートをせかせか集める渡辺さん。
俺も、慌ててノートを拾った。
「だ、大丈夫、か?」
かっこ悪いほどに緊張してしまって。
なんたって話したのはこれが初めてやったから。
バッと顔を上げた渡辺さんが、ほんの一瞬目を見開いた。
「……あっ…ありがとう!」
パァっと花が咲いたように笑う渡辺さん。
ドキンと胸が高鳴って、慌てて視線を逸らす。
全部拾い終わって、スッと立ち上がる。
「じ、じゃあ。」
「あ…う、ん…。」
何故か残念そうな顔をする渡辺さん。
その表情に、全身の筋肉が硬直したように動けなくなる。
もしかして、荷物を持って欲しいのか。
その判断が正しかったかは分からんけど、俺は渡辺さんからノートの束を奪い取った。
「えっ」
「や、重そうやったから…迷惑、やったかな」
「うっ、ううん!!ありがとぉ」
ほんのりと頬をピンクに染めてふにゃりと笑う渡辺さんから、急いで目をそらした。
「ほんまにありがとうなぁ。重かったから助かっちゃった。」
「いや、全然大丈夫やから。」
じゃあこれで。
そう言って立ち去ろうとした時、くいっとシャツの裾を引っ張られた。
「え…」
「あ…」
はっとした表情で、慌てて手を離す渡辺さん。
その気まずそうな顔にドキドキしながら、なんて言ったらいいのか分からずに頭をかいた。
しばしの沈黙。
その時、渡辺さんの友達であろう女の子2人が駆け寄ってきた。
「みるきー!」
「こんなとこおったん!?」
慌てて笑顔を浮かべる渡辺さん。
その笑顔は、どこか寂しげで、悲しそうで。
でもそんなこと聞ける勇気もないまま立ち尽くした。
楽しそうに喋ってた女の子が、俺を見て不思議そうな顔をした。
「あれ?誰?みるきーの知り合い?」
首をかしげた女の子に、もう1人の女の子が大きく笑った。
「そんなわけないやん!みるきーの友達にこんな地味そうな男子おらんって!」
酷いことを言われてるのは分かってる。
でも、それは紛れもない事実で、傷つくことは一切無かった。
でも、なんか気まずくて、苦笑いして立ち去ろうとした時。
「なんでそんな事言うん?」
驚いた。
やって、あの渡辺さんが低い声で怒ってたから。
女の子2人も、驚いてて。
俺は呆然とするしかなかった。
「山本くんは、ノート運ぶの手伝ってくれてん。そんなこと、一生言わんとって。」
怒った顔の、渡辺さん。
今まで、1度だって笑顔以外を見せんかったのに。
そして、女の子の1人が「みるきー…?」って呟いた瞬間。
「っ!!」
ハッとした顔で、渡辺さんがニコッと笑った。
なんとか場を和ませて足早に去っていく渡辺さん達を、俺は見つめるしかできんくて。
そして、ふと疑問に思った。
なんで、俺の名前知ってるんやろう。
15/12/20 07:32更新 / n.u