「お話」16.
「…気がつけば、私は道路の上に立っていた。
一台車が通りかかったから、慌てて歩道に入る。
辺りを見渡せば、見覚えのある光景。
…齋藤先輩の家の前だった。
『ねぇ。ここどこ?』
頼りなげに舞っている蝶、フィレモンに訊けば、
『分からないのか?
お前の記憶はもうそんなに劣化して…
……ここは、齋藤とやらの家の前だ。
ちなみに今は齋藤が死ぬ日の朝だが』
『え』
やっぱり?
あぁでもなるほど。
ここで、この時間にもうすぐ事故に遭う先輩を助けろ…って話?
だとしても……どうやって?
『そういえば……』
『なんだ?』
ふと思った事を口にしてみる。
『私、制服じゃないと怪しまれるんじゃない?』
そう。
この日は平日のはずで。
学校もあるから、制服を来ていないと怪しまれるのかも…?
『はははっ』
フィレモンはいきなり笑い出す。
『自分の服装見てみろ服装を』
『……あ』
なんで気がつかなかったの…?
私、ちゃんと制服着てるじゃん。
ってあれ…?
フィレモンの…口調が変わった……?
フィレモンはまだ笑ってる。
『頭にメガネ乗せてメガネを探す老人かお前は……あはははっ!はは…』
…あれ?
なんか…懐かしい感覚…
齋藤先輩と一緒に居るみたい…。
『あっははは…はは…』
フィレモンはまだ笑っている。
楽しそうに。人の気も知らないで。
『はーいもう笑うのストップ。近所迷惑。』
そう私が歯止めをかけようとしても。
『いいじゃないかどーせ俺の声なんてお前以外誰にも聞こえねーよっ!』
とか言ってまた笑い出す。
とてつもなく腹が立つ。
とその時。
ガチャッ
『行ってきまーす』
パタン…
齋藤先輩が出てきた。
いくらか焦っているようで、急いで自転車の鍵を開けている。
そして、さーっと私の目の前を通りすぎて…
…通りすぎて?
『あ!』
そっか。引き留めないと。
『齋藤先輩!おはようございますっ!』
そう大きな声で言うと、先輩はこっちを向く。
当然、自転車を漕ぎながら。
危なすぎる。
と、先輩はびっくりしたような顔をして、自転車を止める。
そして言った。
『…松崎さん…歩き??』
『えっ?』
あっそうか。自転車、今ここに無いんだ。
『はいそうです!』
『…学校間に合う?』
そう先輩が心配そうな顔をしたから、
『頑張ります!』
と笑顔で答えた。
と、その時だった。
ふと横を向けば、いつだったか見覚えがあった紅い車。
なんと私に向かって突進してきた!
あ…そう言えば、私道路の真ん中に立ってた…
ガシャン!
『松崎さんっ!』
その声が聞こえると同時に、体に強い衝撃を感じて、後ろに軽く吹っ飛んだ。
後頭部を後ろのフェンスで強く打った。
あまりにも痛くて、しばらく動けなかった。
そして。
目を開ければ。
倒れた自転車と
地面に無造作に放り投げられた鞄
そして
血溜まりの中に
倒れている人影。
『齋藤…先輩……?』」
一台車が通りかかったから、慌てて歩道に入る。
辺りを見渡せば、見覚えのある光景。
…齋藤先輩の家の前だった。
『ねぇ。ここどこ?』
頼りなげに舞っている蝶、フィレモンに訊けば、
『分からないのか?
お前の記憶はもうそんなに劣化して…
……ここは、齋藤とやらの家の前だ。
ちなみに今は齋藤が死ぬ日の朝だが』
『え』
やっぱり?
あぁでもなるほど。
ここで、この時間にもうすぐ事故に遭う先輩を助けろ…って話?
だとしても……どうやって?
『そういえば……』
『なんだ?』
ふと思った事を口にしてみる。
『私、制服じゃないと怪しまれるんじゃない?』
そう。
この日は平日のはずで。
学校もあるから、制服を来ていないと怪しまれるのかも…?
『はははっ』
フィレモンはいきなり笑い出す。
『自分の服装見てみろ服装を』
『……あ』
なんで気がつかなかったの…?
私、ちゃんと制服着てるじゃん。
ってあれ…?
フィレモンの…口調が変わった……?
フィレモンはまだ笑ってる。
『頭にメガネ乗せてメガネを探す老人かお前は……あはははっ!はは…』
…あれ?
なんか…懐かしい感覚…
齋藤先輩と一緒に居るみたい…。
『あっははは…はは…』
フィレモンはまだ笑っている。
楽しそうに。人の気も知らないで。
『はーいもう笑うのストップ。近所迷惑。』
そう私が歯止めをかけようとしても。
『いいじゃないかどーせ俺の声なんてお前以外誰にも聞こえねーよっ!』
とか言ってまた笑い出す。
とてつもなく腹が立つ。
とその時。
ガチャッ
『行ってきまーす』
パタン…
齋藤先輩が出てきた。
いくらか焦っているようで、急いで自転車の鍵を開けている。
そして、さーっと私の目の前を通りすぎて…
…通りすぎて?
『あ!』
そっか。引き留めないと。
『齋藤先輩!おはようございますっ!』
そう大きな声で言うと、先輩はこっちを向く。
当然、自転車を漕ぎながら。
危なすぎる。
と、先輩はびっくりしたような顔をして、自転車を止める。
そして言った。
『…松崎さん…歩き??』
『えっ?』
あっそうか。自転車、今ここに無いんだ。
『はいそうです!』
『…学校間に合う?』
そう先輩が心配そうな顔をしたから、
『頑張ります!』
と笑顔で答えた。
と、その時だった。
ふと横を向けば、いつだったか見覚えがあった紅い車。
なんと私に向かって突進してきた!
あ…そう言えば、私道路の真ん中に立ってた…
ガシャン!
『松崎さんっ!』
その声が聞こえると同時に、体に強い衝撃を感じて、後ろに軽く吹っ飛んだ。
後頭部を後ろのフェンスで強く打った。
あまりにも痛くて、しばらく動けなかった。
そして。
目を開ければ。
倒れた自転車と
地面に無造作に放り投げられた鞄
そして
血溜まりの中に
倒れている人影。
『齋藤…先輩……?』」
14/06/28 00:57更新 / 美鈴*