うざい来訪者〜山吹〜
原田side
『…で、どうするんですか??』
暫くして聞こえてきた小原さんの声は、いつもの調子を取り戻していた。ちょっと安心。
「さて、どうしたらいいんだろうねぇ。」
小原さんが黙ってる間に確認したけれど、
隠し機能のマップでは俺たちの今いる場所がどうしても表示できない。
恐らくゲームを制御してるメインコンピュータのせいだな。
不具合とかじゃなくて、一部だけあるんだよな。こういう場所。
GPSも似たようなものだしなぁ。
あと、任意の相手の周りの様子とかが見えるカメラ機能みたいなのもあるけれど、
これだけ視界が悪いとどうにもならないんだよなぁ。
「学年トップレベルの学力を持つ小原さん、答えをどうぞ!」
『わかりません。』
即答かよおい。少しでも考えてくれよ!!
『そもそも私なんかより先輩の方が賢いじゃないですか。
隠し機能を多々見付けた先輩なら、何か方法があるんじゃないんですか?』
いや、こんなアホが小原さんより賢いわけないだろ。ってつっこんでる暇はないな。
とりあえずさっき試してみた機能を次々と述べていく。
「電話は今してる、メールは関係ない。カメラも然り。視界が悪いし使ってもどうにもならない。
アラームはこの雪じゃ無理だろう。音が吸い込まれる。
マップ、GPSはさっき使えないことを確認したよ。
つまり、俺のできること全てやったけど全部失敗。どうしたらいいか俺にもわかんない。」
お手上げだよ、と一言付け加えると、
残念そうなため息が流れてくる。
いくら経験者とは言えども、俺は万能じゃない。できることだって限られてる。そこんとこわかって欲しいよね。
『方法はないってことですか?』
「まぁそういうことかな。」
「いや、ひとつだけありますよ??」
「『!?』」
背後から突如聞こえた声。
きっとあっちにも聞こえたのだろう。
同時に息を呑む音がした。
恐る恐る、後ろを向く。
「あっちょっと通話切ってもらえますー?」
そういって、俺の通信機を奪う。
『ちょっ待って…!』
制止する小原さんの声を無視して、そいつは通信を切った。
風ではためく鮮やかな紅。
そう。こいつは…。
「圭輔君…だっけ?」
「ちょっともー!だっけ、なんてひどいじゃないですかー先輩!」
へらへらと笑いながら近付いてきて、俺に通信機を投げ渡す。
「頭のいいフタリならなんとかなると思ったんですがねぇーやっぱり無理だったんですか」
相変わらず圭輔君はへらへらと笑っている。
うざっ。そう心から思った。
早くどっかに行ってくれよぉ…
というかさぁ。
「じゃあ圭輔君は出方分かるわけ?」
「当たり前じゃないですか。」
「そうだよね、やっぱりわからないよね……え?わかるの!?」
わかるのかよ!
「まぁ先輩には『特別に』教えてあげちゃいましょうかー♪」
うわぁ。超うぜぇ。
けど聞いとかないとこっから出れないし……!
「じゃあ教えてくれ。」
「人に頼む態度じゃないでしょう?」
笑みを浮かべたまま、まぁよくある台詞を吐いてくる。
「何?先輩であるこの俺に、土下座して教えてくださいお願いしますとでもやれと言うのか、あぁ!?」
イラついてるせいか、口調が荒くなってしまう。
「勿論です♪流石先輩、察しがいい…って離してください!!苦しい!苦しい……!!」
いい加減にもうプッツンきた俺は、おもむろに圭輔君の服の襟を握ると、そのまま吊り上げた。
「離してください。許してください。お願いします。と言いやがれ。んでもって、つべこべ言わずにさっさとここから出る方法教えろ。早く。お前が、絞め殺される、前にな……」
思ったよりも低い声が出ていて自分でもびっくりする。
電話、繋がってなくて良かったと正直思った。
こんな地を這うような声、小原さんに聞かれて怯えられても今後困るしなぁ。
いや、別に嫌われたくないとかじゃない。断じて違う。
まぁともかく。
「離してください、許して、ください…お願い…します……!」
そう言ってる声が聞こえたのでとりあえず降ろすことにする。
ぱっと手を離すと、圭輔君は重力に従ってどさっと落ちた。
「さぁ。さっさと方法を言いやがれ。さぁ。」
「…わかりましたよ…」
渋々、といった面持ちだが、なぜか楽しそうなのが腹が立つ。
何、こいつ。どMなの?こいつ。
「ここから出る方法は…」
俺にそっと耳打ちしたその方法。
それは、俺の怒り苛々その他もろもろを吹き飛ばすには充分だった。
「なっ………」
なんだこいつ。なんでこんなにニヤニヤしてるんだ。
「大丈夫ですよ。まちがいなく出られます!
あ、やらないと出られませんからね??」
なんでこんなに自信満々なんだ?
「小原ならこの先に、まっすぐ行ったところにいますよ。じゃあ頑張ってくださいね♪俺達はもう出ますんで!」
そう言うと、圭輔君は今にも鼻唄でも歌い出しそうなぐらい上機嫌で、吹雪の中に消えていった。
「待て………!」
どうやって、その方法を知った?
俺達…って、他に誰がいるんだ?
お前は…誰と…………
「…マジかよ……」
なんだよ。先生たちの陰謀か?そんなことさせて生徒の心を弄ぶつもりなのか?
というかマジでどうしよう。俺、そんなことできる気がしない。
うぅ…くそ…
「………俺にそんなこと、できるわけないだろーーーーーー!!!!」
俺の悲痛な叫び声は、吹雪に掻き消されて、虚空に消えていった。
…その頃、外では。
「サンキュー拓実!!」
「やっと出れたね。」
「さーて、あいつらの様子を見てみるか。実は、原田先輩に覗きの機能を教えてもらって…あいつらの声とか様子とか丸見えなんだよな!!」
「しかも、私たちの声は聞こえないようにすることもできるんだよね!!」
男子二人は、高笑いともいえる不気味な笑い声を上げた。
「さて、レッツ・覗き!!拓実、準備よろしくぅ!!」
「アイアイ・サー!!」
『…で、どうするんですか??』
暫くして聞こえてきた小原さんの声は、いつもの調子を取り戻していた。ちょっと安心。
「さて、どうしたらいいんだろうねぇ。」
小原さんが黙ってる間に確認したけれど、
隠し機能のマップでは俺たちの今いる場所がどうしても表示できない。
恐らくゲームを制御してるメインコンピュータのせいだな。
不具合とかじゃなくて、一部だけあるんだよな。こういう場所。
GPSも似たようなものだしなぁ。
あと、任意の相手の周りの様子とかが見えるカメラ機能みたいなのもあるけれど、
これだけ視界が悪いとどうにもならないんだよなぁ。
「学年トップレベルの学力を持つ小原さん、答えをどうぞ!」
『わかりません。』
即答かよおい。少しでも考えてくれよ!!
『そもそも私なんかより先輩の方が賢いじゃないですか。
隠し機能を多々見付けた先輩なら、何か方法があるんじゃないんですか?』
いや、こんなアホが小原さんより賢いわけないだろ。ってつっこんでる暇はないな。
とりあえずさっき試してみた機能を次々と述べていく。
「電話は今してる、メールは関係ない。カメラも然り。視界が悪いし使ってもどうにもならない。
アラームはこの雪じゃ無理だろう。音が吸い込まれる。
マップ、GPSはさっき使えないことを確認したよ。
つまり、俺のできること全てやったけど全部失敗。どうしたらいいか俺にもわかんない。」
お手上げだよ、と一言付け加えると、
残念そうなため息が流れてくる。
いくら経験者とは言えども、俺は万能じゃない。できることだって限られてる。そこんとこわかって欲しいよね。
『方法はないってことですか?』
「まぁそういうことかな。」
「いや、ひとつだけありますよ??」
「『!?』」
背後から突如聞こえた声。
きっとあっちにも聞こえたのだろう。
同時に息を呑む音がした。
恐る恐る、後ろを向く。
「あっちょっと通話切ってもらえますー?」
そういって、俺の通信機を奪う。
『ちょっ待って…!』
制止する小原さんの声を無視して、そいつは通信を切った。
風ではためく鮮やかな紅。
そう。こいつは…。
「圭輔君…だっけ?」
「ちょっともー!だっけ、なんてひどいじゃないですかー先輩!」
へらへらと笑いながら近付いてきて、俺に通信機を投げ渡す。
「頭のいいフタリならなんとかなると思ったんですがねぇーやっぱり無理だったんですか」
相変わらず圭輔君はへらへらと笑っている。
うざっ。そう心から思った。
早くどっかに行ってくれよぉ…
というかさぁ。
「じゃあ圭輔君は出方分かるわけ?」
「当たり前じゃないですか。」
「そうだよね、やっぱりわからないよね……え?わかるの!?」
わかるのかよ!
「まぁ先輩には『特別に』教えてあげちゃいましょうかー♪」
うわぁ。超うぜぇ。
けど聞いとかないとこっから出れないし……!
「じゃあ教えてくれ。」
「人に頼む態度じゃないでしょう?」
笑みを浮かべたまま、まぁよくある台詞を吐いてくる。
「何?先輩であるこの俺に、土下座して教えてくださいお願いしますとでもやれと言うのか、あぁ!?」
イラついてるせいか、口調が荒くなってしまう。
「勿論です♪流石先輩、察しがいい…って離してください!!苦しい!苦しい……!!」
いい加減にもうプッツンきた俺は、おもむろに圭輔君の服の襟を握ると、そのまま吊り上げた。
「離してください。許してください。お願いします。と言いやがれ。んでもって、つべこべ言わずにさっさとここから出る方法教えろ。早く。お前が、絞め殺される、前にな……」
思ったよりも低い声が出ていて自分でもびっくりする。
電話、繋がってなくて良かったと正直思った。
こんな地を這うような声、小原さんに聞かれて怯えられても今後困るしなぁ。
いや、別に嫌われたくないとかじゃない。断じて違う。
まぁともかく。
「離してください、許して、ください…お願い…します……!」
そう言ってる声が聞こえたのでとりあえず降ろすことにする。
ぱっと手を離すと、圭輔君は重力に従ってどさっと落ちた。
「さぁ。さっさと方法を言いやがれ。さぁ。」
「…わかりましたよ…」
渋々、といった面持ちだが、なぜか楽しそうなのが腹が立つ。
何、こいつ。どMなの?こいつ。
「ここから出る方法は…」
俺にそっと耳打ちしたその方法。
それは、俺の怒り苛々その他もろもろを吹き飛ばすには充分だった。
「なっ………」
なんだこいつ。なんでこんなにニヤニヤしてるんだ。
「大丈夫ですよ。まちがいなく出られます!
あ、やらないと出られませんからね??」
なんでこんなに自信満々なんだ?
「小原ならこの先に、まっすぐ行ったところにいますよ。じゃあ頑張ってくださいね♪俺達はもう出ますんで!」
そう言うと、圭輔君は今にも鼻唄でも歌い出しそうなぐらい上機嫌で、吹雪の中に消えていった。
「待て………!」
どうやって、その方法を知った?
俺達…って、他に誰がいるんだ?
お前は…誰と…………
「…マジかよ……」
なんだよ。先生たちの陰謀か?そんなことさせて生徒の心を弄ぶつもりなのか?
というかマジでどうしよう。俺、そんなことできる気がしない。
うぅ…くそ…
「………俺にそんなこと、できるわけないだろーーーーーー!!!!」
俺の悲痛な叫び声は、吹雪に掻き消されて、虚空に消えていった。
…その頃、外では。
「サンキュー拓実!!」
「やっと出れたね。」
「さーて、あいつらの様子を見てみるか。実は、原田先輩に覗きの機能を教えてもらって…あいつらの声とか様子とか丸見えなんだよな!!」
「しかも、私たちの声は聞こえないようにすることもできるんだよね!!」
男子二人は、高笑いともいえる不気味な笑い声を上げた。
「さて、レッツ・覗き!!拓実、準備よろしくぅ!!」
「アイアイ・サー!!」
14/07/09 22:13更新 / 美鈴*