騙し絵

季節は打ち寄せる
波のように

いつのまにか夏が来て
去年と違うヒグラシが
同じく鳴いて

いつのまにか秋が来て
去年と違う彩葉が
同じく舞い散って

いつのまにか冬が来て
無垢の雪に埋もるのは
誰も過ちといわない過ち

苦い思い出が
良いとか悪いとか
誰が言ったの?

図書館を抜け出た騙し絵は
今ではもうWebに溢れて
人の真実を言いふらす

正義を巡るすったもんだも
まるで作り話のように

パンとサーカス
それと戦争

弱いことがそんなに罪なの?
ってあの子は泣いた

正義を貫き通す
あのロマンチックな
王蟲の群れのように

一点に収斂する価値めがけ
まっしぐらに突き進む

無邪気な好きが
嫌悪の影を引き連れて

どっちがいい?
どっちでもいい
どう伝えたらいい?
…伝えたいの?

言葉の価値を信じて
それで幸せ?

救われなければ
救われないなんて
人ってなんて面倒だ

人の生きざまと
死刑囚の足掻きが
同じだからって何なの?

人はどうして愛を
しがらみを
求めるのだろうね

知ってるくせに
知らないふり

物語にノれないモヤモヤも
晴れた途端にそこはもう
意味を失った世界

人っていうのは
否定しようにも
否定できないから

現実だけが唯一なら
現実などないから

輪廻転生しようとも
そこから抜け出そうとも
なにも変わらない

幸せというものが
脳天気な思い込みなら
ずっと脳天気なままであれ

物置の片隅で眠っていた
幼き日の落書きは
しばし過ぎし日の旅へと誘い
やがて
食われるために生まれる
畜生どもの悲しみを教える

そしてまた
いつのまにか春が来て
ぼくらはまた
花を探し求めるのでしょう

23/12/26 23:01更新 / しそら
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c