豊かな海に溺れる

 色づいた木の葉が
 ひらひら ひらひら
 舞い落ちて

 消化できない
 人の言葉みたいに
 降り積もり

 秋風に揺られて
 小さく波打つのは
 遠きあの日の海辺みたい

 人生の意味も 命の意味も
 少し嗜むくらい

 たとえ分かったとしても
 どうなるものでもないのだと

「分からない…」
 そこに留まることが
 健全の証しなのだと

「我思う故に我あり」
 所詮 存在など
 それ以上のものではないと
 過去の英知は笑う

 左利きは寿命が短いとか
 ほっとする

 独り男は寿命が短いとか
 ほっとする

 死刑制度があるせいか
 死が刑罰みたいで
 なんだか後ろめたい世の中で

 誰かのせい?
 でもその誰かのせいまで
 すべて抱えて生きていくのが
 ぼくら命なのだと

 虚しさって
 もう用が済んだって合図でしょ?
 だったらもういいじゃない

 むやみやたらな振る舞いこそ
 異常だよ

 あんなおもちゃが なんで
 あんなに欲しかったんだろう

 海辺で拾った
 ガラスの欠片を陽に透かせば
 キラキラ キラキラ
 とてもきれい
 いつかのときめきを
 思い出しそう

 この地上に
 憧れの地などない

 いっときの気の迷いも
 どうか許して

 詩は人を酔わせるばかりで
 真実にはほど遠く

 まるで
 豊かな海に溺れて死んでいく
 みたい

 いい世界だったと
 最期は笑って泣きたいな

22/11/29 12:38更新 / しそら
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