夏の終わりの…

駅前で工事中のショベルカーが
オアシスで水浴びする象に見えたり

夕闇を切り裂き走る新幹線が
夜空を旅する流れ星に見えたり

良かれ悪しかれ
いろいろなものを人は重ね合わせ

春  夏  秋  冬
目覚め 盛り 実り 眠る

人の命にも季節が宿り
振り返りたくなるのは
いつも夏の終わり

清々しい風が吹きはじめ
ひつじ雲が空をのんびり散歩してる

夏が憎らしかった
みんなを狂わせてしまった夏が

狂わなければ
夏は来なかったのかも知れないけれど
二度と還ることはない

秋が好きだった
身にまとう涼しいそよ風は
夏の狂気を遠ざけてくれた

ともに狂ってしまえば
いっそよかったのかも知れないけれど
二度と還ることはない

冬は温かかった
幼稚園の池に張った氷が割れて
落ちたぼくを
先生たちが助けてくれたんだ

だけど 今は春が好き
夏を怖がるように逃げる春が

変わっていくことが怖くて
逃げ回っていた
あの頃の臆病なぼくに似て

あの 暖かな春が好き

季節は繰り返すけれど
人の心に訪れた
二度とは還らない
春が好き

22/09/20 17:42更新 / しそら
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