美しい

「美」という文字を
見つめていると何か
ゲジゲジに見えてくる

ゲジゲジは
陰湿な場所に
住んでいて

たまに人間に
見つけられては
たいてい殺虫剤を
吹き掛けられてる

もがき苦しむ姿も
気持ち悪いものだから

それこそ
虫の息が
途絶えるまで

殺虫剤を
吹き掛けられてる

ほんと
どうしようもないやつ

ティシュペーパーに
搦め捕られて
ごみ箱へ
投げ捨てられる
だけなんて

そんな僕だから
美しさなんて 永遠に
手が届かなかったのかな

目の前の世界には
美しいものが溢れ
きっとその先の世界にも
美しいものが溢れていると
信じることができるのに

僕自身が薄汚いせいで
美しいものを美しいと
伝えることさえ
できなかった

僕だって
美しさを見つける眼があり
美しさを嗅ぎとる鼻があり
美しさを感じる心があるのに

この眼は何のために
あったのだろう
この身体は何のために
あったのだろう
この思いは何のために
あったのだろう

あぁ
一度でいいから
美しいと称賛されてみたかった
一度でいいから
美しさの内部へ潜り込みたかった
一度でいいから
美しさと混じりあいたかった

今はもう
叶わぬ希望
叶わぬ夢


  


美しいものが残るなら

もう それだけでいい



20/04/13 13:22更新 / しそら
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