至る道。寄り道。秘歌
既に思い出の中でしか会えないが
我が師は人間であった
たまにあやかしか何かのような
速さや力を見せるが
やはり人間である
川の上から桃に乗り流れてきたり
竹の中からピカッと生まれてきたりしていないのである
おそらくは。
ある日
そんな師が残り少ない自らの頭を
ぺちぺちと叩きながら語る
短歌
柳生をはじめ何人かの至りし人達が
秘伝、口伝、あるいは至る境地を短歌を残したという
全く興味ない。
こら、といわれる。
口に出ていたらしい。
おもむろに詠みだした。
つくばねの
峯より落つる
みなの川
恋ぞ積りて
淵(ふち)になり
けり。
ぺちぺち。
元の短歌を変えた武の口伝らしい。
ぺちぺちは師が砂漠化が終りを告げ、草木も生えぬ自らの頭を叩いている音である
そんな事はどうでもよく
短歌であっても師が恋などと口にするのが一番ショックだった
こら、といわれる。
また口に出ていたらしい
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