湿舌
真実を笑顔で塗り固めて
君は今日も 何もなかったように笑う
その手の温もりが誰かのだったと知った夜
見ないふりをしたら続けられた?
忘れたふりで抱き締めたなら
あの日の二人を演じられた?
「ごめん」と泣いて縋りつく君に
言葉が一つ 喉元でつかえて
伸ばした手を引き戻して
僕はただ そっと首を横に振った
昨日までは確かにここにあった
幸福と約束が音を立てて崩れて行く
寄せては返す波のように一人繰り返す
自分のせいにしたら君を許せた?
その嘘ごと抱き締めたなら
傷付いたままで笑い合えた?
見上げた空に そう問いかけてみても
冷たい風が心の隙間を通り過ぎて行くだけで
降り出した瞳に 明日の形もわからないまま
深い夢の底へと落ちて行く
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