解体工事

駄菓子の品揃えが豊富で
故郷の商店を思わせる雰囲気がある
古き良き昭和を伝える店は
再開発が行われる地域で

何人もの子供たちを迎えては送り出して
惜しまれながら閉店する商店は
ここだけではなく
話を聞けば聞くほどそれぞれの記憶のなかに
包まれているのであろうが

当たり散らせる何でも良い物体に当てはまるから
という下衆への逃げ道を急ぐように車両が警笛を鳴らしていて

その先では目の不自由な老婆と
やや俯いて歩む老爺が
手を握っていた

通信技術が精神すら砕く時代に
取り残された精一杯の力でじっと
尊く堪えて動じないさまは

守り続け
歩んできた愛情と
感謝の深さを示していた


飴がもうひとつ

食べ終わった飴がもうひとつ


25/03/17 22:00更新 / hinoki no bou
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