沼底の真珠
底には真珠が眠っているんだよ
そんな誰かの言葉を信じ
僕は暗い沼に飛び込んだ
光も差さぬ闇の中で
手探りのまま底をさらう
けれどこの手に掴んでも
暗がりに隠れたそれを
真珠だと思うことは出来なくて
掴んでは離し
掬い上げては落とし
僕は闇色の水の中
どこにどこにと泳ぎ回る
既に離してしまったそれが
本当は真珠だったのか
それとも未だ
底に真珠は眠ったままなのか
月も差さぬ太陽も逃げた
こんな暗がりの中では
判ずる術も無く
それでも僕はずるずると
諦めることもできずに
泳ぎ続けている
どこか遠く沼の外で
悲しい子だねと
僕を笑う声がした
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