香花は秋雨を願う

薄闇に漂う霧の合間
切れ切れに広がる甘い香り
次いで広がる細い声
濡れた耳を澄ましてみれば
雨願いの歌が聞こえた

一雨ごとに夏は去り
一雨ごとに秋が来る
だからどうか
時だけが過ぎてしまわないように
雨よ 雨よ
秋がちゃんとこの地へ
やって来れるよう
導いておくれ

金花の歌は細く微かに頼りなく
香りと共に風に乗る
水を含んだ風はいずれ近いうち
雲を導き雨を降らすのだろう

その雨できっと
あの金色の歌い手たちは
全て散ってしまうのだろう
あの甘さも全て雨に洗われて
まるで何も無かったかのように

それでも金花は歌うのだ
それでも雨を願い
それでも秋を願うのだ

20/11/28 14:37更新 / ねこK・T
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