香花は幸せを告げる
冷えた花茶は揺れながら
喉の奥へ滑り落ちる
そこに既に居なくても
鼻と口とに落とした香りは
初夏風のように私を染め上げた
既に君は居ないのに
それでも残る蘇る君の香り
不思議だね と呟くと
幸せでしょう? と言葉が返る
だって何度も思い出せるのだもの
悪戯っ子のように笑うのは
胸へと落ちていった花茶香
そうね そうね
私は瞳を閉じる
何度も思い出せるのは幸せね
たとえそれが苦くても
たとえ涙が滲んできたとしても
居ない何かを感じられる思い出せる
それは自分がここに居るということ
花茶を飲む自分が居るということ
それだけで幸せなはず
なのにね
涙に乗った小さな言葉に
返る声は無かった
あの香りはもう体内を巡ってしまったのだろうか
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