とある街 V  乾いたブリキ人形

鈍色の大時計が三度打たれると
大勢のブリキ人形が波になって
たんぽぽの洞窟を通りすぎる
ツルハシ片手に

濁った湖の裏で
真四角に水を切り出す
血の一滴がにじまないように
一片も欠けないように

何度も何度も水に刺したツルハシは錆び
交差する隊列の体の軋む音が洞窟を埋めた
運ぶうちに水は蒸発して欠けていく
散乱した壊れモノが花をちぎり泣く

鈍色の大時計が四度打たれると
大勢のブリキ人形は波となって
れんげの帰り道を通りすぎる
ツルハシ片手に

19/03/29 14:53更新 / 辻葉冷弧
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