謳う

もう少しだけ
もう少しだけでいいから
この汚れきった世界で儚い幻想を
酸化した世界に水の中から祈りを
枯れたならもう一度涙を与えて
散ったならもう一度嘘を重ねて
涼やかな歌を
紡ぐ歌はやさしくうつくしい夜の歌
誰もいない部屋の窓の小夜曲
悪夢ばかり
数えたら指が足りなくて
日に日にまざまざと明瞭に
滲み出すは原色の憂鬱
閉じられた緞帳の裏で
なお生活を演じ続ける
流れる血潮が乾かぬうちに
願うことすら忘れぬうちに
この手でこの生を

19/03/27 20:55更新 / 辻葉冷弧
作者メッセージを読む
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c