夜
夜を好きだと思えたんだ。
鳥はもう一羽も見えやしなくて
それはもう煙が思わせぶりに消えるよう。
時折車が通るだけで
家々は内側ばかり見ている。
いつも空気を青ざめさせるのは
切れかかった街灯の光と蝉に似た音。
暗さがなくなっちまって
どこか寒々しかった風。
窓から見ていた。
網戸ごしの夜は美しくて、遠かった。
いつかそこに行きたかった。
夜の中にいたかった。
ただそこに在るから
何もかもが見えなくて
でも確かにそこにあって。
夜にいる。
消さない。
それでいいんだろう?
夜の歌を歌う
月にあなたの影を映して
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