一年分の強がり
春が嫌いだった。
何もかも奪うから。
桜が咲くのは全部終わった後じゃないか。
見に行こうって口実も作れないんだ。
出会いより別れが痛くて、それに慣れたくなかった。
夏の歌が好きだった。
茹だるような暑さは苦手だけどかき氷と花火は別。
儚いこと知っててもいつまでだって続きそうで。
全力で歌ってた。
汗か涙かなんて覚えちゃいない。
秋と戦っていた。
時間が刻々過ぎていくのを無視して張り切った。
やりたいことも見たいことも多すぎて。
祭りに行事、紅葉は生憎見れなかったけど。
風は冷たくなっていく。
冬はやっぱり寒かった。
どうしてか、一人を感じた。
春ばかりが見えた。
凍えそうで、笑えなくて、雪にはしゃぐ元気も無くて。
ただ淋しかった。
もうすぐ春が来る。
ただそれだけが痛くて、泣きたくなる。
けれどもう少しだけ、笑わなくちゃ。
幸せだった、って言ってやるんだ。
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