夜の街角と生存生命
握りしめた果物ナイフの切っ先が冷えていくのを
手の甲に当ててずっと感じていた
震える体が生存を主張するから
詰めていた息を捨てて もう一度呼吸を止めた
「いつか」
歌を歌っていた
晴れの街を見下ろして
風は吹き荒れて声を揺らした
いつまでも歌っていた
独りぼっちで歌っていた
「こんな」
嘘をついた
救われないことが正しさの所為にある
歪んで見えた色は高尚な白だった
いつまでも空を見ていた
独りぼっちで空を見ていた
「だから」
目を閉じた
「 」
もう、遅いんだよ。
ナイフを机にしまった。
街灯が憎かった。
足音が憎かった。
全てが、憎かった。
TOP