いま、気付くこと

秋雨が冷たく降る、寒い夜

自室には、我ひとり

「寒いなぁ……」

ふと零れ落ちた独り言は

答えを待つこともなく消えていく

もし傍らに誰かがいて

「うん。寒いね」

と、返してくれたなら

それはかけがえのない幸福なことであろう

若かりし頃には

幸福とは豪奢(ごうしゃ)で

人々の羨望(せんぼう)を一身に集める

きらびやかなものだと想像していた

だが歳月を経たいま、ふと悟る

幸福とは、日々の隙間にそっと腰掛け

こちらを見守ってくれている

静かで温かい灯りのようなものなのだと

そう気づけるほどに

自分も年を重ねたのだろうかと

自嘲気味に笑う夜の

まぁなんと長いことか


25/11/22 13:40更新 / まだら雲
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