一つの区画

よく知らない
関わる「必要」のない町に
未熟な男が赴いた

救われないという思いが
心の奥に広がって 
ふと泣きたくなった

多分それは
何年、何十年経っても変わることのない思い

そしてそれは
関わることのない人たちの果てしない人生と
一つの一つのなくなった生命と残された者たちの嘆き

記憶をそのまま伝えられない歯痒さと恐怖への配慮が
そこに暮らす人々の声を心の中に閉じ込める

一労働者が延々と続く復興に対し
救われないと感じながら救いたいと思い
そして
ちっぽけな自分の役割、変化の見えない町と人々の心の豊かさについて考えていると
大切な人を奪った海へ身を投げ出したくなる
それでも淀んだ天気の日、荒れた海と対面するとき
怖くて仕方ないのだ

しかしこの地に訪れた
一人の未熟な男にとって
一つの区画を生まれ変わらせようとする
労働者、一人一人の行動が
心の奥の救われないという思いの中に
救われたという思いとそこで暮らす人々と同じ
それでも救われないという思いが芽生え
やはり来てよかったと心より感じるのだ

そして
物事を何か始める前にすでに始まっていて
終えること自体が未完成である
そんな理解し難い感情に襲われるのである


24/04/25 19:55更新 / RUI
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