はかい、と、さい、せい

例えばにんげんを脱いでみる

薄皮というほど薄くもないコリコリした表皮
不知火踊る位ににぎやかな仮面舞踏
僕にはこれが厄介だった

あざやかな色彩はアレグロの調子で跳ねた
喉仏がぬるりと蕩け血が蟲みたく這い出る
瞳は明後日の方にかたわれを見つける

ばらばらと自らの巣に帰りゆく
漆黒の背広を部屋に残して

今日は薬飲み忘れませんでしたか
今日は薬飲み忘れませんでしたか

ふと最後の髪が立ち止まる
松明の軌跡のようにとろけた紅が
輪郭をぼやけさせたままでぐるぐると戻る

戻る戻る戻る戻る戻る戻るも、
還る還る還る還る還る…
トルソーはよそ行きのドレスに紅潮し
手袋は自ら運命た人の跡をなでる

なぜ脱いだのか
何が悲しかったのか
求められる形とは何なのか
案外人間腸詰とは言い得て妙かもしれない

側の中身は誰も気に留めない
それが虚しかったのかもしれない

僕の言葉に頷いた人は言葉の素性を知らない

そして蘇る
そして蘇る
そして蘇る
ただの記号と再び化さぬよう
もう一度にんげんであれるよう
人恋しくなり肌恋しくなり泣き崩れてしまう
中身が漏れ出してしまう
恥ずかしい入れ物で荒れますように

仮面もボトルに変わりなく
色彩もマグカップだったんだ!

還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る還る

一度にんげんを生きてみる



24/10/14 08:56更新 / らりるれろ
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c