彩度ヲ落トセ

彼の声が大衆になった。

嫌になってヒールのまま逃げてきた。
雑踏、蹲れば蹲るほど疼く。

残念なことに戦士になれなかった私は
白にも黒にもなれず

辿り着いた役所で3色から選ぶよう言われ
「テキトーにしといて」と吐き捨てた。

近頃新設されたイエローには
オススメ!とポップアップが付いている。

つまりはその他、だ。

あまりの複雑さに目を背けているのだ。
ただこの国の人と認めるつもりしかない。

言い方が悪かったのかもな。反省してる。
私は照り映える程マゼンタだったのだ。

「彩度を落としてくれ!!」
私の声が待合室に響く。

白いスーツの職員は振り返らない。
誰も彼も涙が鮮やか過ぎる。

これではまるで歯車と化すことに
快感を得る性的倒錯者ではないか。

感情とはいつから見せ物になったんだ!
私はそんなに自意識過剰ではない…

日常に埋もれるささやかな
雫にさせてやってくれよ頼むよ。

そして私は彼の声になった。



24/06/29 17:34更新 / らりるれろ
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c