彩度ヲ落トセ
彼の声が大衆になった。
嫌になってヒールのまま逃げてきた。
雑踏、蹲れば蹲るほど疼く。
残念なことに戦士になれなかった私は
白にも黒にもなれず
辿り着いた役所で3色から選ぶよう言われ
「テキトーにしといて」と吐き捨てた。
近頃新設されたイエローには
オススメ!とポップアップが付いている。
つまりはその他、だ。
あまりの複雑さに目を背けているのだ。
ただこの国の人と認めるつもりしかない。
言い方が悪かったのかもな。反省してる。
私は照り映える程マゼンタだったのだ。
「彩度を落としてくれ!!」
私の声が待合室に響く。
白いスーツの職員は振り返らない。
誰も彼も涙が鮮やか過ぎる。
これではまるで歯車と化すことに
快感を得る性的倒錯者ではないか。
感情とはいつから見せ物になったんだ!
私はそんなに自意識過剰ではない…
日常に埋もれるささやかな
雫にさせてやってくれよ頼むよ。
そして私は彼の声になった。
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