演劇の神様

(第一幕 演劇のかみさま)


あの子のヨーイ、ハジメで始まる全て
そう何もかもがイチから 100も見えぬまま


「場転は早くしろ、そこブルー転ちゃうぞ

地明かりやって何遍言えば分かるん?

あー…あのなぁそこは暗転でサス

Qシートに書いてあるやろ、うろ覚えでやんな

演者もやで分かっとる?大会まで日がないねん

セリフ入れろ 自然な演技を

声が出んからってがなるな

あ、音声さんもう少し音上げて

いや上げすぎ、もう少し下げて

ああ、下げすぎ…んんソコ!ソコ、はい

来週からは台本外すんやけ気合い入れてこ、

はい次に第二幕シーン3

問題のシーンやけ集中しようや

由紀子、ちょっと来て

大丈夫アンタならいける私が見抜いたんで?

あんなこと言っててもな

信じとるんよアンタらのこと

息吸って吐いて、ほらゆっくり

背中さすったるけほらフーッって、うん

じゃ位置付いて

いい?皆んな、行くよ?
よーい」



はじめ


「そして何もかもが始まった」

「そして何もかもが初めて」

「まるで何も知らぬ赤子のように」

「知らないことを一つ一つ覚えるように」

「感情が湧き立つ」

「自分の役以上の何かが」



ト書きにある以上の何かが
咲き誇り、散る


他人にナるという
一見摩訶不思議の先に


下手から上手へ緩やかな風が吹いている


どんな采配だろうと好いている
僕らは演劇の神様に惚れているのだ






(第二幕は要らない 暗転はしない…)


23/10/16 23:00更新 / らりるれろ
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