虹む
「一度死んだ人間だ
振り返って見るものなど無い」
「一度死んだ言葉だ
歌って供養する必要など無い」
「一度死んだ愛だ
愛だからと甘えるつもりも無い」
「二度は死なぬ僕だ
夕立に泣けば流れる白い肌」
「二度は死なぬ言葉だ
雪に沈めば船底を探して」
「二度は死なぬ愛だ
足は歩き出すためにあるのだ」
そう言い聞かせはするけど
心は蘇生不可能な程死んでる
どうすればいいだろう
水彩絵の具に落とした涙
(日々死んでいく眼だ
振り返らずとも映る、重ねた泥)
(日々死んでいく鼻だ
歌わなければ香らぬ生命の波)
(日々死んでいく耳だ
諦めた愛のその次を待ち続ける)
何十 何百 何千回と死んで
忘れたイロカタチニオイザワメキ
何万 何億 何兆回と死んで
覚えたヨロコビカナシミワライカタ
何京目かで初めて
死ぬ事を拒んだのです
『アラガイ』を覚えるのです
だってこんな世界に滲んで見えなくなるなんて嫌 荒み切って呆れられるなんて嫌 机の上に無造作に散乱してはたき落とされるなんてもっと嫌 嫌 嫌だ
忘れられるのはずっとずっとずっと嫌
それなら
仕方なくだけどまだ生きてる方がいい
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