聞いた話

聞いた話によれば


美しく散っていったらしいじゃないか

御国のため

天皇陛下のためといって

その心臓を潰したらしいじゃないか


そんなことは全く無くて


死ぬのが怖いと泣いたそうじゃないか

最期に想ったのは

家族や

友や

思い人だったらしいじゃないか



私にはなにもわからない

私はその時代の空気のにおいを知らない


その話は

あまりにもリアルだった

その話は

あまりにも酷いものであった

狂気はなかった

ただ残酷なまでに正気だった


歴史は塗り替えられていく

貴方達も塗り替えられていく

だから私たちは分からない

分からないでほしいのかもしれない


宙に消えた貴方

火花になった貴方

海に溶けた貴方


どれが本物の貴方かは

誰にもわからない


誰も知らない

誰も分からない


そんな貴方を気紛れに思い

涙を流した人がいることを

世界がわかることはない





20/12/16 19:20更新 / 1026
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