勝手な失望
「返して、返してよ、こんなのってあんまりじゃない」
外の通りで女性が叫んでいた
わたしは冷房の効いた部屋のカーテンを開けて
窓からそれを見つめていた
朝顔がしぼんでいる
靴擦れが痛くて外に出る気にはなれない
布団に寝そべり
ぼろぼろのヘッドホンで歌を聴いた
異国語はなぜかノスタルジー
女性はついに泣き始めた
鍵をかけた扉のずっと奥
並木道で虫が太陽に近づく
自転車の錆は夢見が悪い
キャスターが大笑い
恐ろしくてたまらない
次の受診はまだ遠い
暗く冷たいへや 不安なへや
夏を切り取ったへや わたしだけが居るへや
「どうして、こんなつもりじゃなかったのに」
わたしは祈る、頓服薬を冷たい水で流し込む
祖父の信じた純粋な乙女が笑う
貴方は海に来ちゃいけないよ、
きっと天使の手招きに魅了されるから。
女性が刃物で地面を穿つ
そのとき
あれ どうして
私のからだがつめたくなってく
ああ そうだったのか
穢れた魂を灯篭にして流す
川はどこまでも流れていく
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