深い呼吸をして。
午前五時前の空でとんびが鳴いていた
あの遠い窓の中 きっと幼い私が眠っている
起こしてはダメよと とんびに告げると
とんびはちょっと残念そうに 屋上の向こうへ消えた
午前五時前の空はまだ 白く霞んでいる
信号機 街灯 知らない屋根と路上駐車
大きく息を吸い込むと 肺の中の夜がすうすうと
朝の空気に紛れて溶けだした
三階の窓から眼鏡を投げ捨てて
寝癖のついた髪をやわらかく指にからますと
信号機は目を覚まして 空が青く晴れていった
午前五時前の空にゆっくり指を伸ばすと
風が吹き込み 四角い部屋の中であたらしいいのちがはじまる
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