ひととせを急かす針
時計は止まらないまま私のなかの時間だけが止まっている
─十二ヶ月の愛
・
針は私を刺してその痛みで急かす
責め立てるようにこう言う─早く諦めなさい
うららかの影を見ないふりの投薬治療に
刹那 愛を見た
私の優しさが人を救うと思っていた
付け上がった思い違いではなくて
例えば目の前のあなたさえ
私の言葉にその傷を癒されてくれているのだと…思っていた。
・
アカシジアと共に落雷。
雨の止まない、湿気の教室に居た君はもう
感傷の水を抜け出している
五感がきちんと働かないなか
第六感だけがようやく息をしていた
アカシジアと共に落雷。
小さな毒の水槽に、稲妻が走る
・
ペトリコールはノイズを踏んだ。
空から落ちたわたしの心
雨になって打ち弾けろ
ゆびで作る銃が メルヘンに光った
ココロを膨張させた アナタを許せないわ 許せないの
こんなにも 過去に憑かれた わたしの事 許せない
・
命の重さを理解しないことは罪なのだろうか
涙を流さないことは罪なのだろうか
昔の傷跡を掻き毟って 掻き毟って 掻き毟って……
もうなにもそこには残らないのに
もうなにもそこから進まないのに
ねえ どうしてなの 時計が壊れない
あたしの部屋のカレンダーは
あなたといたあの年のまま
助けてよ 連れ出してよ この月の裏の陰鬱から
路地裏でひそかに芽生えた
白いワンピースのあの子のおさげが揺れる
じんじんと響く蝉の音
駆け足の秋が来る 空っぽの秋が来る
・
ふんわりと巻いたマフラーに顔をうずめると、
たちまち世界のスイッチが切り替わり、
あの喧しい夕焼けから、静かに降り積る夜の雪。
しんしんしんしん、ゆきふりつもる。
しんしんしんしん、耳鳴りがする。
夜の星空、大声の波。
身を投げて、やがては、岩礁に打ち付けるからだ、膨れる。
両手を広げた。手は、もうかじかんでる。
この手を、包み込んで愛してよ。
少し離れた場所で、猫がにゃんと鳴く。
きみはわたしよりも、もっともっと強いね。
・
助けて、足を進めて
伸ばす手は眠りに誘う
さようなら、愛しい季節よ
そっと口付けをして ロッカーに鍵をかけた
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