負けて悔しいはないちもんめ

ずるずる引きずっている。あの子の事を、ずるずる引きずっている。
おもい出はときを経てさらにおもくなる。
いつまでたっても、いつまでたっても、あたしはあの子を忘れられずに、
ズルいだなんて決めつけて、また深夜、泣いては自分を困らせている。

あの日の教室と鞄の重さと、
あの子の母のたばこのにおいを、
知らない土地で見た 夕陽にきらめくにごったきれいな川を
どうしてもう 思い出せなくなったんだろう

こっそりと作ってもらった二人の時間を
暗い部屋で 同じ布団にもぐって 真夜中の外に響く音を聞いたことを
どうしてもう 忘れたいと思ってしまうのだろう

あの子がほしい
あの子がほしい

だけどきっと思い出の中のあの子は
いま知らない彼女に変わっている
あたしのしらないところで
あたしが視えない彼女になっていく

人見知りな小さな声はいつのまにか 別の人に相槌を打つ大きな声に変わっていて
帰り道分かれ道 もう二度と一緒に歩くことは無くて


夕陽の差し込む古い教室に
すれ違って 小さく手を振ったあの子が

ああ あたしのなかの 最後の君 


20/03/05 17:05更新 / ヨルノアサヒ
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