雨とほうきの歌
緑色、ビニルの廊下で
ほうきに跨り
プールになった水浸しの教室を横目に
あたしは空を飛んだ
拝啓あの日の風鈴と短冊よ
もし私が今からかける魔法により
きみたちが青天の下に太陽を仰ぐのなら
からだをめいっぱいにはためかせて
リンリンと夏の音を鳴らして見せておくれ
あたしはほうきの柄をぱしんと叩いた
ああ夢見心地で空を飛ぶ
やがてグラドゥスアドパルナッスム博士は
逆さになり雨を垂らすのよ!
心臓が高く鳴っていく
早く起こしてナイトメア
雨足が強くなり
あたしは屋根の下に潜り込む 潜り込む…
びしょ濡れ血まみれ泥まみれ
水槽の中
熱帯魚が暖色をひらひらと揺らしている
もう戻れない もう戻れない もう戻れない
信じるもんか 信じるもんか 信じるもんか
食べかけのパンを無理やり口に詰め込むと
低空飛行で灰色の雲を目指す
あたしはあたし
それ以外の何でもない
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